2007/06/14

On The Dark Side : マケイン=ダース・ベイダー論

マケインの大統領への夢は、再びブッシュによって絶たれてしまうのだろうか。

不思議な記事をインターネットで見つけた。マケインの選挙を手伝っているMark McKinnon(Senior Media Advisor)が、オバマが民主党の候補になったら、マケインの選挙から手を引くといっているらしい。政策面ではオバマに同意しているわけではないが、アフリカ系アメリカ人として国を変えるユニークな潜在性があると感じており、その芽を摘む役割は演じたくないというのが理由だそうだ(Wolffe, Richard, "I'm a McCain Man, Through and Through--Unless the Democrats Nominate Obama. Then, Forget the McCain Thing", Newsweek, June 6, 2007)。

McKinnonは先頃ブッシュ政権と決別したMatthew Dowdと同じく、元は民主党筋でありながら、テキサス時代にブッシュ陣営に転じた過去がある。その点では、「保守の黄昏」の一貫という見方も可能だろう。しかし、自分が感じたのは、エスタブリッシュに歩み寄ろうとしたマケインの悲劇である。

マケインは、主流派への異議申し立てで売った2000年の選挙と違い、今回は主流派の戦いをしようとした。2000年に厳しく競ったブッシュ陣営とも和解し、イラク戦争や移民問題では共闘する。ブッシュのスタッフも引き入れた。McKinnonはその代表格だった。陣営を移った時には、「英国海軍からカリブの海賊に移籍したみたいだ」なんて言っていたものである(Baker, Peter, "Alliance and Rivalry Link Bush, McCain", Washington Post, April 29, 2007)。

しかし、ブッシュの人気は低迷。マケインにとって、イラク・移民問題はアキレス腱になっている。そして、McKinnonまでもがこの始末である。

思い出されるのは、暫く前のLos Angels Timesの記事である。2000年の選挙では、マケインは帝国に歯向かうルーク・スカイウォーカーのようだった。しかし、今回の選挙では、マケインはダークサイドに魅せられた。同じジェダイの騎士でも、悲劇的な結末を辿った誰かのように(Chait, Jonathan, "McCain goes over to the dark side", Los Angels Times, March 10, 2007)。

マケインの選挙運動には、主流派を意識しているが故の軋みも感じられる。例えば財政政策である。マケインは、共和党の中でも減税派ではなく健全財政派に属する。実際にマケインは、2001・03年のブッシュ減税には反対票を投じている。また、選挙スタッフにはブッシュ陣営を引き入れながらも、経済関係のアドバイザーには、うるさ型として議会共和党に煙たがられた二人の議会予算局長(クリッペンとホルツィーキン)を起用している。

しかし、マケインの財政政策はいま一つ歯切れが悪い。一層の減税こそ声高には主張しないが、ブッシュ減税の恒久化には賛成する。それどころか、たとえ歳出削減との組み合わせでも、ブッシュ減税の打ち切りには反対するという(Chait, ibid)。歳出・歳入の両面から財政健全化を目指すのではなかったのか?また、裁量的経費の削減には熱心だが、肝心の義務的経費問題では、超党派の議論が必要という主張が目立つ程度。「超党派の議論」というのは、「増税も辞さず」という暗示なのだろうが、具体像は見えてこない。

ダース・ベイダーは最後には昔の自分を取り戻す。マケインにも転機は訪れるのだろうか。

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