2007/06/17

ある晴れた日に:Come Home Soon

自分が持ち歩いているMP3プレーヤーには、どこで手に入れたかも分からない曲が大量に放り込んである。8 MileのEminem(?)ではないが、いつものように、それを聴きながら移動中にこのページの原稿を書いていると、ふと流れてきた音楽にハッとさせられた。

早く家に帰ってきて

あなたのいないhouseはhomeじゃない

一人では死にたくない

早く家に帰ってきて


電車の中なので、歌詞は切れ切れにしか聞き取れない。女性グループによるカントリーの歌だ。確認すると、SheDaisyのCome Home Soonという2004年の曲だった。

「早く家に帰ってきて」。こんな歌詞は、米国の演歌たるカントリーでは、どうということのない決まり文句だった筈である。しかし、自分が直感的に感じたように、今の米国では、こうした歌詞の意味合いは全く変わってしまった。

そう、この歌はイラク戦争に出征した兵士の帰還を待つ妻のストーリーなのである。

New Republic誌によれば、イラク戦争の泥沼化が進むに連れて、カントリーによる戦争の取り上げられ方が変わってきたという(Cottle, Michelle, "Changing Tunes", New Republic, June 8, 2007)。9-11の後、基本的にはRed Americaの音楽であるカントリーからは、愛国的な(時には好戦的な)歌が相次いだ。反旗を翻したDixie Chicksが、カントリー界から締め出されたりもした。

しかし、そのトーンは次第に変わって行く。帰還した兵士の迷いや、残された家族の思い。決して声高ではないが、パーソナルなストーリーが語られるようになった。

米国には、イラクに駐留する米兵に、ギターなどの楽器を寄付するボランティアがいるという(Slevin, Peter, "Amid the Chaos of War, Gifts of Music", Washington Post, June 12, 2007)。Washington Post紙は、ギターを受け取った兵士のこんなコメントを引用している。

"The uplifting rhythm of all jazz and blues riffs calm my soul and warm my heart. It only takes one song to feel like I'm at home."

Come Home SoonがMP3プレイヤーから流れてきた時、車窓には澄み切った青空が広がっていた。

まるで、あの日のニューヨークの朝のように。

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