2007/06/08

Was First Cut The Deepest ?: ブッシュ vs. 保守派

米国では、移民改革法の審議が暗礁に乗り上げたようだ。上院は採決に移るための動議の可決に失敗してしまった。保守派を正面から批判してまで改革を主張したブッシュ大統領だが、結果は厳しかった。もっとも、肝心な時に本人はサミットでドイツだから、何となくちぐはぐ感は残る。

ところで、ブッシュ大統領が保守派に反旗を翻したのは、これが始めてではない。むしろ両者の緊張関係は、2000年の大統領選挙の時から存在していた。

象徴的な出来事が、1999年7月22日にインディアナ州で行なわれた"Duty of Hope"と題された演説である。

ここでブッシュは次のように述べている。

「政府がなくなりさえすれば、すべての問題は解決するという考え方は、『ほっておいてくれ』という以外に、何の高度な目標も、高貴な目的も持たない非建設的な考え方である。(中略)政府は国民の敵ではない。(中略)政府の活動は慎重に制限されなければならないが、その枠内においては、強く、行動的で、尊敬されなければならない」

90年代の保守陣営には、いわゆるLeave Me Alone Coalitionという考え方があった。国民は、政府なんかには放っておいて欲しいと思っている。政府をどんどん小さくすれば、共和党の支持はどんどん増える。94年のギングリッチ革命で、こうした考え方は一気にメイン・ストリームに躍り出た。

しかし、その栄華は続かない。民主党のクリントン大統領は、財政赤字の削減や、福祉改革に相乗りし、「小さな政府」では、共和党との差異を消す。一方で、赤字削減の方策として、医療費をターゲットにした共和党を、冷酷であると攻撃し、国民の支持を回復した。

「放っておいてくれ」で選挙に勝つのは良い。しかし、実際にその権力を握った後は、政府をどう扱えば良いのか?そんな疑問が渦巻いていた時に飛び出したのが、この演説だった。

David Brooksは、この演説が瀕死の保守主義を救ったとして、高く評価している(Brooks, David, "A Human Capital Agenda", New York Times, May 15, 2007)。単に彼の嗜好に合っていただけじゃないか(...)とは思うが、少なくとも、当時の「瀕死の保守」は、異議を申し立てたブッシュを受け入れた。その意味では、今回とは立場が違う。

今の共和党も、少なくとも傍からみれば危機的な状況にある。しかし、その原因については、保守主義に問題があったというよりは、ブッシュがいけなかったという見方が根強いように感じられる。99年のような異議申し立てよりも、レーガン賛美への回帰が目立つのは、あまりにブッシュが酷い状況になってしまったことの裏返しなのかもしれない。

それが共和党にとって吉と出るか、凶と出るか。その答は、2008年まで待たなければならないのだろう。

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