It's Ending…and It's Official (a sort of)
移民法改革の失敗が濃厚になった。28日に上院は、包括的な移民法改革案の採決に移るという動議を否決した。ブッシュ大統領は記者会見で「努力が及ばなかった」と発言。滅多に失敗を認めない大統領の、極めて珍しい敗北宣言であった。
移民法改革の挫折によって、ブッシュ政権が国内政策で大きな成果を残せる可能性は、ほぼ皆無になったと見られている(Baker, Peter , "Bush May Be Out of Chances For a Lasting Domestic Victory", Washington Post, June 29, 2007)。Washington Postが指摘するように、2004年に再選を果たしたブッシュ大統領は、国内政策に関して4つの目標を掲げた。公的年金改革、抜本的税制改革、移民法改革、訴訟改革である。しかし、いずれの改革も、ほとんど進展を見せないまま、ブッシュ政権は終末期を迎えようとしている。いや、最後の望みであった移民法改革が挫折した時点で、国内政策の点では、第二期ブッシュ政権は終わってしまったのかもしれない。
中間選挙で共和党が敗北した際に、政権が浮揚する契機として、移民法改革をあげる識者が少なくなかった。民主党と超党派の合意を得られやすいというのが、その理由だった。しかし、こうした見方は正しかっただろうか。超党派路線で政権が浮揚を目指すのであれば、政権はそれまでのやり方を見直す必要があった筈だ。しかし移民法改革は、選挙の前後で政権が方針を変えるような分野ではなかった。政権に近い考え方を持つ民主党が議席を増やしたから、移民法改革は通しやすくなった。それだけの話である。
しかし、移民法改革については、民主党内にも深刻な意見の相違がある。まして、大統領が共和党からの支持を広げようとすれば、その方向性はむしろ超党派路線から離れていく。大統領に譲る意図も余地もない中で、民主党が積極的に政権に協力するインセンティブは少なかったのではないだろうか。
ブッシュ政権が本気で超党派路線での復活を目指すのであれば、その舞台は公的年金改革であるべきだった。この問題での党派間の意見の違いは、思われている程大きくない。現在の年金制度を切り崩すような個人勘定(carve out)には、民主党は賛成しにくいだろうが、現行制度に積み増すような仕組み(add on)であれば、賛同者は少なくない。政権にとっては、公的年金改革という党派対立を激化させた張本人とでもいうべき問題で、個人勘定という持論を譲歩する姿勢を見せる余地があったのである。
移民法改革の挫折とほぼ同じタイミングで、国内政策のみならず、イラク政策の点でも、ブッシュ政権の終わりを告げる様な出来事があった。6月25日に、共和党のルーガー上院議員が、ブッシュ政権に駐イラク米兵の削減を求める演説を行なった(DeYoung, Karen and Shailagh Murray, "GOP Skepticism On Iraq Growing", Washington Post, June 27, 2007)。議会共和党は、9月までは待ちの姿勢を取る筈だった。外交委員長を務めた重鎮議員の演説で、そのスケジュールが突然早まった感がある。
ブッシュ政権のレイム・ダック化が進む2007年は、次の政権への「移行期」になると思っていた。しかしこのままでは、残りの約1年半は次の政権までの「空白期」になってしまうかもしれない。
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