2007/06/23

Nussle is Dane !:ブッシュ政権失速のcollateral damage

ブッシュ政権から、ロブ・ポートマン行政管理予算局(OMB)長官が離脱することになった。ブッシュ政権の求心力喪失は今に始まったわけではないが、気になるのは、後任人事が議会民主党に発するメッセージである。議会民主党は、今回の人事を政権による宣戦布告として受け止めるだろう。果たしてそれは、政権が十分に熟慮した上での方針なのだろうか。

レイム・ダック化が進むブッシュ政権には、二つの選択肢がある。一つは、民主党に歩み寄り、後世に残る実績作りを目指すこと。もう一つは、保守寄りの姿勢を強めて、求心力の回復に努めることだ。

ブッシュ政権がポートマンの後任に選んだのは、ナスル前下院議員である。予算委員長を務めた経験もあり、財政に関する知識は申し分ない。問題は民主党との関係である。同じ下院議員出身でも、党派を超えた信頼を得ていたポートマンと違い、ナスルには党派対立を辞さない血の気の多い政治家という定評がある(Solomon, Deborah, "Nussle Nominated for Budget Chief", Wall Street Journal, June 20, 2007)。ナスルの評価を聞かれた民主党のホイヤー下院議員は、散々ポートマンを称賛した上で、「ナスルは(自分と同様)デンマーク系だ」と突拍子もない発言をして、報道陣を煙に巻こうとした(Hearn, Josephine, "Hoyer: Many words, no comment on Nussle", Politico, June 19, 2007)。社交辞令すら言いたくない理由があったのだろう。

いずれにしても、ブッシュ政権によるナスルの後任指名は、どう考えても、民主党への歩み寄りとは取られないだろう。問題は、これがどこまで計算された動きなのかである。確かにブッシュ政権は、これから秋にかけて本格化する予算審議では、歳出抑制を合言葉に、拒否権を駆使して民主党と対峙していく方針のようだ。その背景には、保守派が共和党に幻滅したのは歳出の膨張を許したからであり、そこでの姿勢を明確にしなければ、次の選挙でも苦心するという判断があるという(Novak, Robert D., "Bush's Veto Strategy", Washington Post, June 18, 2007)。

しかしブッシュ大統領には、後世へのレガシー作りを目指す色気も見られる。その好例が、超党派の合意を目指す移民法改革である。選挙への影響を考えるのであれば、こんな改革は止めて欲しいという共和党議員は少なくないだろう。それでもブッシュがレガシーを目指すなら、民主党の協力は不可欠である。

こうしたなかで決まったポートマンの後任人事は、ブッシュ政権もいよいよ内政でのレガシー作りをあきらめた証なのだろうか。ブッシュ自身は二度と選挙には出ないけれど、自分よりも共和党のレガシーを優先するというのだろうか。

カール・ローブ的な世界では、そんな計算もあるのかも知れない。しかし、ローブの名前をめっきり聞かなくなったからか、そこまでの決断があるようには、どうも感じられない。むしろ、政権運営から一貫性が消えて行っているような気がしてならない。

ところでナスルといえば、現在のポジションは、ジュリアーニ陣営のアイオワ州担当である。アイオワ州選出の下院議員だったナスルは、昨年同州知事選に出馬して敢え無く落選、浪人中の身だった。ナスルがいても、アイオワでのジュリアーニの選挙運動はなっていなかったという見方もあるが(Yepsen, David, "Rude Rudy", June 20, 2007)、ゼーリックを世銀に持っていかれたマケイン陣営といい、ブッシュ政権の失速からとんだ流れ弾が飛んできたものである。

0 件のコメント: