対中法案:真打ち登場へのカウントダウン
今日はPCに向う余裕がなさそうなので、携帯からの短信で…
米議会では、13日に新しい対中法案が提案される予定である。これまでも様々な対中法案が議論されてきたが、いよいよ真打ちの登場である。
「またか」と思われる方も少なくないだろう。しかし、米議会に提案される対中法案が、着実に進化していることは見逃せない。
昨年まで世間を賑わせていたシューマー・グラム法案は、中国が為替制度を改革しなければ、高率の制裁関税を発動するという、いささか乱暴な内容だった。たとえ成立しても、WTO違反は確実であり、むしろ「可決するぞ」という脅しのために用意された側面が強い。
しかし今度の法案は違う。シューマー、グラムの両議員に、ボーカス、グラスリーという主流派の議員が参加した今回の法案は、WTOに整合的で、大統領拒否権を覆せるだけの賛成票の獲得を目指すという。
ポイントは、少なくとも表面的には中国を狙い打ちにしないことだ。ボーカス、グラスリー両議員が前議会に提案した法案の考え方が踏襲されるのであれば、標的になるのは、「根本的な不均衡にある通貨(Fundamentally Misaligned Currency)」である。
副次的な効果もある。日本を目の敵にする勢力にも、支持を広げられることだ。通貨が「根本的な不均衡」にあるというのは、実効為替レートの水準を対象に、実際に観測されるレートと、マクロ経済のファンダメンタルと整合的なレートの間に、実質的で持続的な乖離が存在する場合を指す。そこでは、必ずしも為替介入の是非が問われるわけではない。従って、日本だって対象になり得る。例えば米国の自動車業界は、人民元より日本円という立場だから、こうした法案は歓迎だ。
注目されるのは、法案がどこまで行政府の行動を縛る内容になるかである。今の議会の状況を考えれば、何らかの対中法案が成立するのは、時間の問題かもしれない。恐らく政権も、何らかの法案の成立はやむを得ないという方針だろう。
そうであれば、グローバリゼーションを擁護する立場からすれば、いかに「より悪くない」法案で落とすかが、知恵の出し所になる。いわば、確信犯としての、「保護主義のコントロール」である。
従って、行政府にある程度の裁量が残り、また、行動を強いられるにしても、それほど強硬な内容でなければ、政権としても仕方がないという判断は有り得る。議会にしても、圧力を一段上げるポーズが大切なのであって、ここで極端に走る必要はないという考え方もあろう。
もっとも、確信犯であっても、上手く落とせるかどうかというリスクは残る。一度動き出した法案は、時にコントロールが難しくなる。大統領選挙との絡みも不確定要因である。
何より見逃してはいけないのは、「より悪くない」法案というのは、基本的には時間稼ぎだということである。稼いだ時間で何をするのか。本当の課題はそこにある。
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