2007/06/29

Present from Cheney...to Romney

チェイニーの懐古談と08年選挙を結ぶリンク。それはアドバイザーである。Cesar Condaは、チェイニーの国内・経済政策のアドバイザーだった。彼こそが、グリーンスパンから渡された文書(財政赤字の拡大は金利の上昇を招く)に反論を書いたスタッフである。そして今回の選挙でCondaは、ロムニーの経済スタッフに名を連ねているのである。

これまでの記録を見る限り、Condaは立派に(?)保守の経済政策を信奉しているようだ。その論理展開は、保守派がブッシュ政権に望んだ財政政策の、ピュアな形ともいえる。また、政策の政治的な効果に関心がある点には、元気だった頃のブッシュ政権が思い出されて、妙な懐かしさすら感じてしまう。

例えばCondaは、今年の4月に、最高税率の引き上げを批判するコラムを書いている(Conda, Cesar, "Brace for Backfire", National Review, April 26, 2007)。民主党が、AMT改革の財源を高額所得層増税で賄おうとしていたことへの反論である。Condaは、最高税率の引き上げは、中小企業への打撃になり、起業家スピリットを傷付けると主張する。また、最高税率の引き上げは、政治的にも悪手だというのが、彼の主張である。米国人は金持ちからの再配分を求めるような妬みの強い国民ではない。むしろ、階級闘争の色彩がある税制改革は、選挙では必ず逆効果になる。88年の高額医療保険、90年のブッシュ増税、93年のクリントンによる増税が好例である。

またCondaは、06年の中間選挙の前には、共和党の劣性を挽回する方策として、今ではサッパリ聞かなくなった、投資家階層論を展開している(Conda, Cesar and Daniel Clifton, "The GOP Has Some Explaining to Do", National Review, October 18, 2006)。投資家階層論は、ブッシュ政権がオーナーシップ構想を推進する論拠の一つになった議論である。株式投資をする有権者は、経済成長を重視するようになるために、共和党の経済政策に親近感を持ち易くなる。だから共和党は、投資優遇税制などによって、投資家階層を増やすと同時に、彼らに利益を還元して、共和党への支持を固めるべきだ。簡単に言えば、そんな考え方である。

このコラムでCondaは、共和党は好調な株価の恩恵を受けてしかるべきだと主張する。ブッシュ政権が推進したキャピタル・ゲイン減税(いうまでもなく、チェイニーのお気に入りである)や配当課税減税が、株価を引き上げたからだ。共和党は投資家階層へのアピールを強め、更なる減税を打ち出すべきだというのが、Condaのアドバイスだった。

Condaはどの程度ロムニーの経済政策に影響を与えるのだろうか。詳しいことは分からないが、共和党の有力候補者の中では、ロムニーがもっとも減税に前向きな発言をしているのは事実である。特にロムニーは、法人税減税を視野に入れていると言われる。税制上の正統性はさておき、大企業批判の気運がある米国では、売り込み方の難しいスタンスである。

実はCondaは、法人税減税論者としても知られる。Condaは、「税制は成長・経済効率と社会的な目的のどちらを優先すべきか」という質問に対して、財源に限りがあることを考えれば、児童税額控除の拡充等よりも、税収のフィードバックが期待できる法人税減税の優先度を高くするべきだと答えている。またCondaは、米国の生産性を向上させるための方策としても、もっとも有力なのは法人税減税だとも発言している(Pethokoukis, James, "Romney Adviser: Cut Taxes for Companies, Not Kids", U.S. News & World Report, Aprl 5, 2007)。

ロムニーは、社会政策や宗教の部分で、保守派に対する弱みがある。それだけに、経済政策で保守派にアピールする必要性は高い。ひょっとすると、「チェイニーの贈り物」が活躍する余地は大きいのかも知れない。

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