2007/06/23

In an Uncertain World:オバマとファンド・マネー

高学歴者にオバマ支持が多い理由は、年功序列への違和感が一因だという議論を先日取り上げた。実は同じ様な現象が、お金の流れにも見られる。ヘッジ・ファンドや、プライベート・エクイティ・ファンドからの政治献金が、オバマに集まっているのである。

少々古い話になるが、今年の第1四半期の政治献金統計で目を引いたのが、オバマの金融界からの集金力である。ウォール街の有力投資銀行11社の社員からのオバマへの献金額(47.9万ドル)は、地元ニューヨークのジュリアーニ(47.3万ドル)や、ヒラリー(44.8万ドル)を抑えて、堂々の第一位を記録した(Jensen, Kristin and Christine Harper, "Obama Top Fundraiser on Wall Street", Washington Post, April 18, 2007)。もっとも献金額の多かったゴールドマンの場合を見ても、オバマが集めた献金(12万ドル)は、ヒラリー(6.4万ドル)の2倍近かった。ファンドからの献金にも似たような傾向がある。プライベート・エクイティの場合、同じ期間のオバマへの献金額(8.5万ドル)は、やはりヒラリーへのそれ(4.8万ドル)を大きく上回っている。

オバマの金融界とのコネクションは、ヒラリーとは対照的である(Risen, Clay, "Money Man", New Republic, May 11, 2007)。ルービン元財務長官に代表されるように、ヒラリーにはウォール街の大物がついている。Thomas Lee、Roger Altman、Steve Rattnerなどは、90年代にLBOで名を馳せた、ベビーブーマー世代の猛者である。これに対して、オバマを支持しているのは、一回り若いX世代のファンド・マネージャー達。Eton Park Capital ManagementのEric Mindichや、Quadrangle GroupのJosh Steinerなどが、その好例である。

背景にある力学は、高学歴・低学歴の場合と似通っている。ブーマー世代にすれば、まだ若すぎるオバマは、必要な入場料を払っていない存在だ。一方で、日の出の勢いのファンド勢にしてみれば、経験よりも、アイディアやカリスマが大切なのである。

但し、ファンドのオバマ支持には、それらしい計算高さも反映されている。既にヒラリー陣営にはエスタブリッシュが群がっている。今さら若輩者が列に並んでも、メインテーブルには座れない。しかし、オバマ陣営であれば、主賓扱いも夢ではない。

中にはファンドらしく、ヘッジをかけているかのような動きもある。オバマを支持するJosh Steinerも、Quadrangle Groupでは、ヒラリーを支持するSteve Rattnerの右腕である。

言ってみれば、ファンドにとってオバマは、日常的に取扱っている投資商品のようなものである。エスタブリッシュされておらず、新しくリスキーで、アップサイドの潜在性が高い商品だ。

大統領選挙への投資に期待されるのは、政治的なリターンである。米国には、ファンドに対する政治的な風当たりが強くなる兆しがある。今も米議会では、ファンドへの課税強化を巡る議論が活発になっている。大物に化けそうな味方を作っておいて損はない。

もっとも、国際金融市場では、ファンド・マネーの足の速さが、リスク要因として議論されることが少なくない。ファンドからオバマに流れているポリティカル・マネーには、どの程度の粘着力があるのだろうか。

ファンド・マネーの争奪戦は熾烈である。ファンド・マネージャーが多く住むコネチカット州のグリーンウィッチは、献金を求める候補者達で賑わっている。この地に居を構える新興富裕者層にとっては、選挙関連のイベントに関わることが、社交上の必要要件になっているとも伝えられる(Cowan, Alison Leigh, "Wealthy Enclave Offers Windfall for Candidates", New York Times, May 28, 2007)。

そんな中で、しっかりリスクを管理しているように見えるのが、ルービン家である。元長官とヒラリー陣営の結び付きは、周知の事実である。その一方で、J.P.Morganのプライベート・エクイティ・ファンドであるOne Equityを取り仕切る息子のJamie Rubinは、オバマ陣営を支持している。

もちろん、ルービン家にとっては当然の選択なのだろう。何しろ、この世の中には、確かなことは一つもないのである。

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