Who's Supporting Whom :「怠惰」なトンプソンとブッシュの距離感
こんなにトンプソンを取り上げるつもりではなかったのだけれど、今が旬なので仕方がない。
ブッシュ・チェイニー人脈が、トンプソン陣営に流れ始めているらしい(Allen, Mike, "Key Bush backers rally to Fred Thompson", Politico, June 4, 2007)。
大所では、チェイニーの顧問を務めたマリー・マタリンが、アドバイザー役としての活動を始めているようだ。また、経済政策については、ブッシュ政権の経済顧問だったローレンス・リンゼーが責任者になる見込みだという。リンゼーにすれば、2000年にブッシュ陣営で担当したポジションの再現である。ブッシュ政権の経済政策担当者としては、グレン・ハバードとグレッグ・マンキューがロムニー陣営にいる。鳴かず飛ばずだったマンキューはともかく、リンゼーとハバードはブッシュの減税路線の仕掛人。トンプソンとロムニーの経済政策には、ブッシュの色彩がどこまで残るのだろうか。
このほかにも、ホームページの立ち上げを担当するのが、現ブッシュ陣営の電子キャンペーンの担当者(Michael Turk)だったり、親父人脈では、国内政策担当(David M. McIntosh)、COO(Thomas Collamore)がいる。極めつけは、ジェフ・ブッシュの息子のジョージ.P.ブッシュ(!)が、トンプソンの資金集めを応援するe-mailを発信していることだ。
もっとも、トンプソンにしても、ロムニーにしても、ブッシュの路線継承を強調している訳ではない。特にトンプソンの演説には、ブッシュの名前はほとんど登場しないという(Brooks, David, "Back to Basics", New York Times, June 1, 2007)。
トンプソンがブッシュに言及しないのは、彼が反ワシントンの立場で選挙を戦おうとしている現れだという見方がある。ブッシュがどうのこうのと、ワシントンの政治にとり付かれているのが問題だというわけだ。この点についてDavid Brooksは、トンプソンは徹底的な分権主義者であり、保守主義の観点からみれば、原点回帰の性格があると指摘する(Brooks, ibid)。Brooksにいわせれば、傷心の保守主義陣営にアピールするには、「原点回帰」は利口なポジションかもしれない(もっとも、21世紀の政策課題には分権主義では対応できないというのが、Brooksの見立ではあるが)。
また、反ワシントンの立場を取れば、経験不足という批判を封じられるという見方もある。有権者の現状に対する不満は強い。そうであれば、「経験者に任せてこの有様だったら、新しいやり方を試した方が良いのではないか?」と主張できるというのである(Dickerson, John, "Lazy Fred", Slate, May 31, 2007)。
一方で、トンプソンには熱意が足りないという議論は燻り続けている。上院議員時代のトンプソンによる、「こんなところで残りの人生を終わるつもりはない」「しょうもない事柄についての『上院の意見に関する決議(sense of senate)』に投票するために、14時間も16時間も費やすのは嫌だ」といった発言は、何度もメディアに取り上げられている。
SlateのJohn Dickersonは、反ワシントンで切り返せる「経験不足」批判と違い、「怠惰」というイメージは、トンプソンにとっては致命傷になりかねないと指摘する。何といっても、有権者は国のために懸命に働く大統領を求めているからだ(Dickerson, ibid)。
Washington PostのRichard Cohenはもっと辛辣である。曰く、トンプソンは何を実現したいかが見えてこない。トンプソンはレーガンに似ているといわれるが、レーガンにはイデオロギーがあり、それを実現するために政治家になった。トンプソンは上院議員としては大した実績を残さないまま、他人が書いた台詞を読む役者に転身した。二人は同列には語れない(Cohen, Richard, "Can He Find His Motivation?", June 5, 2007)。
こうも指摘する。
大統領は誰かに頼まれるのを待っていてなれるような役職ではない。例外は大統領の子供だけであり、同じ間違いは繰り返してはいけない(!)。
そういえば、ブッシュ大統領も、休暇の長さが評判になったことがあるような…
もちろん、出馬前からここまで批判されるのは、注目(警戒?)されている証。トンプソンが正式にリングに上がれば、こうした議論は一層盛んになりそうだ。
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