2007/04/01

To Be With You

First Ladyというのは特殊な重みのある仕事だ。今回の場合はFirst Husband (and Former President)もからんでいるわけで、いかにも米国人好みの関心の高さである。

3月30日にABCの20/20に夫婦で出演したジュリアーニは、もし大統領になったら夫人に政策上も重要な役割を果たしてもらうつもりだと発言した(PÉREZ-PEÑA, Richard, "In His White House, Giuliani Says, His Wife Might Have a Very Visible Role as Adviser", New York Times, March 30, 2007)。

夫人がキャンペーンで果たす役割については、「彼女が望むだけ」。政策の決定に携わる範囲については、「彼女が望むだけ。彼女以上のアドバイザーは得られない」。閣議への参加についても、「もし彼女が望むなら。彼女が関心のあることに関係があれば、私としては全く問題はない」。

ジュリアーニのジュディス夫人は、看護婦と医薬品の販売員の経験がある。ジュリアーニにとっては3人目の夫人で、夫人本人も3回目の結婚(最近までは2回目だといわれていた)である。ジュリアーニにとって、私生活(大揉めに揉めた前妻との離婚、子供との不仲等)はアキレス腱の一つ。その中で、「夫人の政策関与」をぶち上げるのは、なんとなく不思議な気がする。

夫人の政策関与という点では、何と言っても思い出されるのはヒラリーだ。しかし、1992年の選挙戦でのBuy One, Get One Freeといういい振りは、必ずしも好感をもって迎えられなかった。いうまでもないが、First Ladyは厳密には投票で選ばれたわけではなく、政策への関与の正統性というのは微妙な問題である。また、米国にもステレオ・タイプの「夫人像」というのがある。おそらく米国人にとってコンフォタブルなのは今のローラ夫人くらいの位置取りだと思っていたが、今回のジュリアーニが問われないのであれば、時代はずいぶん変わったものである。

そのヒラリーだが、今回はFirst Husbandがついてくる。こちらは現在の米国政治では右に並ぶものがいない「大物」。政治にも政策にも詳しいのは誰もが認める事実である。いったいどのような役割を果たすのかが注目されるわけだが、まずヒラリーが考えなければならないのは、選挙戦での距離感だ。

Gallup社が3月23~25日に実施した世論調査では、とりあえずクリントンの存在はヒラリーにプラスだという結論が導かれている。70%がクリントンはヒラリーのキャンペーンにとって「More Good than Harm」と回答しており、「More Harm than Good」の25%を大きく上回った。

なにせクリントンの好感度は60%である。現状への不満を考えれば、「あの頃は良かった」となっても不思議ではない。

しかし良くみると有権者の態度は微妙だ。68%が民主党の予備選挙で対立候補がクリントンのスキャンダルを取り上げるとみている。本選挙で共和党が取り上げるとみる割合は実に85%だ。クリントン夫妻の夫婦関係についても、76%は投票の材料にすべきでないと答えているものの、実際には58%が有権者はこれを判断材料にするだろうとみている。

で、クリントンは教訓を学んだのか。結果は「教訓を学んだ」としたのが42%、「いまだに同じ人間だ」が51%。

ヒラリーにとっては、クリントンは危うさを伴った武器であるようだ。

さて、夫妻の話題となれば避けて通れないのはエドワーズである。しかしこの話題は軽々しくは書きにくいのも事実だ。

夫人の癌再発にもかかわらず選挙戦継続を決めたエドワーズには賛否両論があると伝えられる。先日の60 Minituesでは、Katie Couricから「飽くなき野望の表れではないか」などと責め立てられていたようだ(Horrigan, Marie,"Edwards Weathers First Iowa Poll Test Since Wife’s Health Crisis", CQ Politics.com, March 28, 2007)。

しかし、癌が発見された場合に、本人や関係者が仕事を抑えたかどうかという調査では、80%がNoと答えているという。金銭等の現実的な理由からの場合もあるし、生活や精神のバランスを維持するために通常の生活を続けようとするという思いもあるといわれる。

ある癌の経験者はエドワーズについてこう語っている。「エドワーズが選挙戦を続けることは夫人のサバイバルにとって重要だ。そのために彼らは生きてきたのだし、続けることが彼女を生きさせる(Leland, John and Pam Belluck, "Like the Edwardses, Some Use Work When They Must Fight Serious Illness", New York Times, March 25, 2007)」。

実際に、60 Minituesでエドワーズを問い詰めたCouricにしても、自らの夫を癌で亡くしており、その闘病中も仕事を続けていたという経験があるという(Shapiro, Walter, "Run, Elizabeth, Run", Salon, March 27, 2007)。

言葉を失う。

エドワーズについても、夫人の強い意向を尊重しての決断だったという見方が強い。民主党のスロットを争うリチャードソンは指摘する。「個人的にはエドワーズは撤退したかっただろう。しかし彼は夫人を気遣ったのではないか。彼女が原因だと思わせたくなかったのではないか(Johnson, Kirk, "Public Takes Up Pros and Cons of Edwards Bid", New York Times, March 24, 2007)」。

実際にエリザベス夫人はこう語っている。「大統領になるべき人を選挙戦から撤退させたということを私のレガシーにはしたくない。それは私にとってフェアではない。私たちが一生の仕事と思って打ち込んできたことをあきらめてしまったら、死ぬ準備ができるだろうか(Steinhauer, Jennifer, "In the Hospital, Mrs. Edwards Set Campaign’s Fate", New York Times, March 25, 2007)」。

エドワーズは会見でこう述べている。

"Any time, any place that I need to be with Elizabeth, I will be there, period."

Good Luckというほかはない。

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