2007/04/10

民主党議会:一学期の通知表

米国では、今日から上院の審議が再開される。下院の休会はもう一週間続くが、この辺りで民主党議会の最初の3ヶ月を振り返っておいても良いだろう。

ここまでの民主党議会を総括すると、「課題だった『まとまり』は十分に維持出来たが、それだけではたどり着けない力の限界も明らかになった」というところだろう。

まず「まとまり」である。伝統的に民主党は、党内に多様な意見があり、団結して動くのが苦手だった。議会運営にしても、指導部の権力が強かった共和党と比べて、民主党は各委員会の委員長が独自の動きに走りやすいのではないかともいわれていた。加えて、民主党が上下両院で多数党になったのは12年振りのこと。多様な支持母体の多様なペント・アップ・デマンドもある。

しかしながら、ここまでの民主党の団結振りは大したものである。議会専門誌のCQ誌がまとめたParty Unity Score(両党の過半数がまとまって違う投票を行なった「対決的な採決」で、自分の政党のポジションと同じ投票を行なった割合)をみると、ここまでの下院民主党議員の平均スコアは98%、上院民主党が95%と極めて高い(Giroux, Greg, "CQ Vote Study Shows Democrats Are Organized Majority So Far", CQ Politics.com, April 2, 2007. "Senate Democrats’ Unity Slightly Less Than House, Higher Than GOP’s", CQ Politics.com, April 3, 2007)。過去と比較しても、ここまでの民主党のまとまり振りは際立っている。同じ数字を遡ると、2005年までのブッシュ政権下の民主党は上下両院ともに86%、クリントン政権時代で下院82%・上院85%である(CQ Weekly誌、2007年1月1日)。

特筆すべきは、イラク問題での左派・反戦派の造反が最低限に止まったことだ。下院民主党が補正予算の採択に成功したのは、反戦派がグループとして反対票を投じる動きにでなかったからだ。実際に、Out of Iraq Caucusに属する73人の下院民主党議員のうち、反対票は7票だけだった(Kane, Paul, "The Iraq supplemental vote: Breakdown of Democratic votes", Washington Post, March 23, 2007)。

反戦派にとって今回の補正予算は、即時撤退にはほど遠いという点で、必ずしも満足できる内容ではなかった。しかし反戦派は、補正予算の否決でペロシを傷付ければ、得をするのはブッシュだと判断した。補正予算に反対票を投じるのは、「ラルフ・ネーダーを支持するようなもの」というわけだ(Toner, Robin, "Democrats Unite Around an Iraq Plan of Their Own", New York Times, March 23, 2007)。

中道派も良くまとまった。下院を例に取れば、Blue Dog Coalitionの43人は、99%の割合で民主党多数派と同じ投票行動を取った("Blue Dogs Sticking With the Party", Washington Post, April 9, 2007)。補正予算でも、中道派からの造反は7票だけである(Kane, ibid)。

同時に、限界も明らかになってきた。法律として成立させられた成果が少ないのだ。例えば、下院民主党は、昨年の中間選挙で、議会開会から100時間以内に6つの優先課題を立法化すると公約していた。確かに下院は全ての法案を採択したが、開会100日を過ぎても、上院の審議を終えて大統領の署名に回された法案は一つもない。イラク戦争にしても、ブッシュ政権の政策を変えられた訳ではない。「民主党は中間選挙でSix for '06といっていたが、実際にはZero for '07だ」と共和党のロット上院議員に揶揄されるのも無理はない(Ota, Alan K., "Unfinished Business Marks First 100 Days", CQ Today, April 6, 2007)。

現実は厳しい。特に上院においては、民主党の議席数だけでは、共和党のフィリバスターに抵抗できない。いくらまとまっても、法律は作れないのである。必然的に民主党は、共和党からの離脱者を誘わなければならないわけだが、そうなれば今度は党内左派が離反しかねない。

民主党にとって、当面の関門はやはりイラク戦費の議論である。ブッシュ側に折れる気配が感じられないなかで、民主党はどのような出口戦略を描くのか。鍵を握るのは、自らも反戦派であるペロシ議長が、「まとまり」というこれまでの成果をある程度犠牲にする覚悟で、共和党が飲める道筋を切り開けるかどうかである。

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