2007/04/17

another big thing : ベビー・ブーマー vs. 団塊の世代

グローバリゼーションが、政策面でのNext Big Thingであるとすれば、もう一つのBig Thingが高齢化である。このページは、少しずつ政策フィールドに議論を広げていこうと考えているので、当然この問題を避けては通れない。

今日はちょっとした前振りを。

米国では、Christopher BuckleyのBoomsdayという本がちょっとした話題になっている。ベビーブーマー世代の年金が自分の税金で支えられていることに憤った29歳のブロガーが、同世代に反乱を呼び掛ける近未来(?)フィクション。自殺を遺族への優遇税制で奨励すべきだという提案が出てきたり、フロリダのリタイアメント・コミュニティーでゴルフに興じているブーマーが数百人の暴徒に襲われたり。荒唐無稽な話ではある。

しかし、Washington PostのRobert J. Samuelsonは荒唐無稽な話から二つの教訓を読み取る(Samuelson, Robert J., "Boomer Boomerang", Washington Post, Aprl 11, 2007)。

第一に、世代的なバック・ラッシュは不可避である。Samuelsonにいわせれば、ブーマー世代への公的給付を、若年世代が税金で支え続けてくれると考えるのは非現実的だ。若年世代の負担は大きくなりすぎるし、多くのブーマー世代は、健康で経済的な余裕があり、約束されているだけの給付を受け取る資格がない。

第二に、にもかかわらず、ブーマー世代は、より一層の公的支援を求めるようになるだろう。ブーマー世代の政治的存在感は、どんどん大きくなる。前回の選挙では、投票者の半数が50歳以上で、四分の一がAARP(全米退職者協会)の会員だったという。

自らもブーマー世代であるSamuelsonは、ブーマー世代に厳しい。次世代の負担を考えずに、こうした制度を温存した罪はブーマー世代にあるというのだ。

「ブーマーは自惚れを美徳にした」というBoomsdayの主人公の台詞を引き合いにして、槍玉にあげられているのが、NewsweekのThe Boomer File。このシリーズでは、有名人のブーマーが取り上げられ、いかに時代を動かしたかが称えられているが、そのくせに、次世代に残した負担には何の気遣いもないと批判する。

良くいわれるように、米国の高齢化の度合いは、日本ほど急速ではない。しかし、「世代の対立」というストーリーで考えると、ベビーブーマー世代のボリュームは軽視できない。日本の団塊の世代は、1947~49年生まれを指すが、米国のブーマー世代は、1946~64年生まれと幅が広い。現在の人口に占める割合は3割弱というから、ざっくりいえば、800万人の団塊の世代に対して、ベビー・ブーマー世代は8500万人近いのである。

ベビーブーマー世代の先頭は、今年で61歳になる。その代表格がブッシュ大統領であり、クリントン前大統領だ。彼らには来年には公的年金の早期受給資格が発生し、2011年には高齢者向け医療保険(メディケア)の支給も始まる。これもベビー・ブーマー世代である米議会予算局(CBO)のホルツィーキン前局長が、講演で「早く自分を捕まえないと手遅れだ」と冗談交じりに言っていたが、米国が次第に難しい時間帯に入りつつあるのは確かである。

今回はほんのさわりだが、このページでは、今後も、グローバリゼーションの問題とベビー・ブーマー世代の高齢化という、二つのNext Big Thingsに焦点をあてていこうと思っている。これらは2008年の大統領選挙でも争点に成り得るし、日本にとってもNest Big Thingsかもしれないからだ。

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