Misunderestimate !
正直言って、政治と金の話はあまり好きではない。上手く言えないが、取り上げる主題としては安易な気がするからだ。だから、今年第1四半期のヒラリーの数字が大きいと分かっても、食指は動かなかった。
しかし、オバマの数字には触れないわけにはいかないだろう。それは金だけの話ではないからである。
4月4日にオバマは、第1四半期の献金額が2500万ドルに達したと発表した。既に報道されている通り、ヒラリーの2600万ドルに迫る数字だ。この時期の民主党候補者としては、99年のゴア(890万ドル)を凌ぐ最高額。予備選全体を通しても、これまでの記録である03年第3四半期のディーン(1600万ドル)を上回った。
総額もさることながら、興味深いのはその中身だ。オバマへの献金者は10万人。ヒラリーの2倍である。この数字が重要なのは、支持基盤の広がりだけでなく、今後の伸びしろの大きさを示唆しているからである。
なぜか。理由は選挙資金に関する規制にある。
米国では、個人が特定の候補者に献金出来るのは、予備選・本選向けにそれぞれ2300ドルずつの合計4600ドルまでだ。オバマの場合、献金者の多さは、一人当りの献金額が小さいことを示唆している。実際、オバマの場合、90%が100ドル以下の少額献金。対するヒラリーは80%である。また、予備選向けの献金額だけを比較すると、オバマ(2350万ドル)がヒラリー(2000万ドル)を上回っているといわれる(Tapper, Jake, "Obama Bests Clinton in Primary Fundraising", ABC News, April 4, 2007)。つまり、オバマの献金者には、まだ上限まで余裕がある。従って、オバマはこれからも、同じ支持者に献金を頼める余地が大きい。しかし、ヒラリーの場合は、予備選上限を超えた支持者が、既に本選向けの献金にまで踏み込んでしまっている。
もちろん、少額献金の多さは、草の根市民への支持の広がりを意味する。しかし、それだけでは一面的な解釈かもしれない。
むしろ浮かび上がるのは、フレッシュさを売りにする候補者の意外に巧みな取り回しだ。
オバマは、シカゴの黒人実力者を足掛かりに、着実に集金マシーンを築き上げてきたという。確かに、04年の民主党大会での演説は、オバマの全国的な認知度を高め、ウォール街やハリウッドに支持者のネットワークが広がった。イラク反戦を旗印にすることで、草の根からの献金も増えている。しかし、その資金集めは、必ずしも素人の技ではない。実際に、選挙資金という意味では、シカゴは完全にオバマの独壇場。ここにルーツを持つヒラリーも、全く資金集めができない状況だという(Drew, Christopher and Mike McIntire, "Obama Built Donor Network From Roots Up", New York Times, April 3, 2007)。
何よりもオバマのキャンペーンが優れているのは、こうした組織面の強さを、「『組織力に頼るヒラリー』に挑戦する『彗星のように現れた新世代の代表オバマ』というストーリーの陰に、完全に隠している点である。
実は、こうした凄みが最大限に発揮されているのが、今回の献金額の発表に関する広報戦略である。この点については、次回以降に触れることにしたい。
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