2007/04/25

AARP:Divided We Fail の脅威

今後のブーマー世代の政治力を考える上で、見逃せないのがAARP(全米退職者協会)の活動である。ブーマー世代は退職し始めたばかりだから、AARPの主役ではない。しかしすでにAARPの政治力は相当なものである。

その威力は、最近の政策動向に与えた影響を振り返れば一目瞭然だ。伝統的にAARPは、社会福祉政策に前向きなために、民主党に近いと考えられてきた。ところが、2003年の医療保険改革法(Medicare Modernization Act)では、一転して共和党を支持して、処方薬代保険(Medicare Part D)の成立を後押しする。と思えば、2005年には、今度は民主党側に立って、ブッシュ政権の社会保障(公的年金)改革案に猛反対。個人勘定を中心とした改革を頓挫させる原動力となった。

そのAARPは、いっそう政治活動に力を入れる方針だという。標的は製薬業界。処方薬代保険を通じた薬価の引き下げや、ジェネリック薬の利用促進、そしてカナダからの処方薬輸入といったところがAARPの重点課題のようである。これらの提案を推進するために、AARPは昨年の230億ドルを超える資金を政治活動に使う予定だそうだ(Birnbaum, Jeffrey H., "On Issues From Medicare to Medication, AARP's Money Will Be There", Washington Post, April 24, 2007)。

なんといっても、AARPは世界一裕福な圧力団体である。会員は3800万人。年間の収入は10億ドルだというのだから恐れ入る。

AARPの活動で気をつけなければ行けないのは、必ずしも「高齢者」の利益だけを考えた活動をしているわけではないことである。年金改革への反対がその典型だ。ブッシュ政権の改革案は、「退職者と退職が近い人」には影響がないように設計されていた。それでもAARPは、360億ドルをつぎこんで反対に回った。「すべての世代の利益を代弁する」というのがAARPの活動方針だからである。こうした方針は、AARPが進めているDivided We Failという活動にも現れている。

言い換えれば、AARPはすでにベビー・ブーマーを視野に入れている。

ブーマー世代を抱え込んだAARPは、いよいよ必要性が増してくる年金・医療保険改革の議論においても、無視できないアクターとしての存在感を示し続けそうだ。

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