インターネットは作ったんだよね!
連休に入ったところで、お約束のゴアの「犬の薬の値段」の話を。ちゃんとみつけてきました。
文脈を説明しておこう。「二つのアメリカ」で発揮されたエドワーズの「型」は、寓話を使う語り口である。ここで重要なのは「ありそうだけど架空の話」であることで、中途半端に本当の話を使ってしまうと、その信憑性を問われて墓穴を掘る。これが得意だったのがゴア元副大統領、という話である。
このページをご覧ください。有名な例があげられています。
「犬の薬」の話というのは、薬価の高さを攻撃する文脈ででてきた「実話」である。曰く、自分の義母と飼い犬は同じ薬を使っている。なのに、義母の薬の値段は犬の薬の値段の3倍近い。どうです。ひどいでしょう。
ところが、実際には、犬の薬の値段は実話ではなくて下院の資料から引いてきた値段。成分は同じでも、犬の薬は「犬用」の別物だった。
ほかにもゴアの発言には、「本当だったらうまい話なんだけど...」というのが幾つかあった。例えば、自分と奥さんが「ある愛の詩」のモデルだったという話。実際には、男性の方のモデルはゴアとその大学時代のルーム・メートだったトミー・リー・ジョーンズの二人(それはそれでなかなかシュールだが)、女性のモデルは別人だったというのがオチである。
今となれば単なる笑い話だが、それではすまされないのが、選挙の怖いところだ。これらに加えて、「インターネットは私が作った」発言もあったものだから、ブッシュ陣営はここぞとばかりに「ゴアの話は信用ならない」と揶揄した。こうしたことが積もり積もっていたから、ブッシュの「ゴアの経済政策はあやしい計算(fuzzy math)に基づいている」という批判が、それなりに有効になってしまった。冷静に考えれば、「あんたにはいわれたくないよ」という類の批判だったのに...思えば、ケリーのSwift Boat Veterans for Truth事件の源泉は、ここにあったのかもしれない。
いうまでもなく、政治家にとって失言はますます鬼門になっている。なんと言ってもインターネットとYouTubeの時代である。「おや?」と思う発言は、すぐに裏をとられ、世界中(!)に広められてしまう。そう考えると、インターネットの時代にこそ、巧みな「寓話」の語り手の威力が発揮できるのかもしれない。
しかし、ゴアがもう一度出馬するとなると、またこの辺の話をほじくり返されるんだろうなあ...
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