ブッシュとマケインが重なるとき
マケインの行動が、日に日にブッシュに似て来たような気がする。
いや、もしかすると最初から二人は似た者同士だったのかもしれない。
マケインとブッシュがだぶって見える事例としては、3点が指摘できる。
第一に、イラク戦争への態度である。
マケインは4月11日の演説で、イラク戦争に勝つことの重要性を改めて強調した(Nagourney, Adam, "McCain Says Democrats Play ‘Small Politics’ Over Iraq", New York Times, April 12, 2007)
「9-11前のアフガニスタンのように、イラクがテロリストにとっての『西部の無法地帯』にならないようにすることは、米国にとって死活的に重要だ。安定したイラクの統治体制が整わないうちに去れば、われわれはまさにそのリスクを犯してしまう。イラクがテロリストの聖地になってしまえば、9-11の再現やそれよりも悪い事態につながりかねない」。「(テロリストにとって)われわれ米国人こそが敵であり、最終的な標的なのだ」。「(撤退期限を決めた補正予算を採択した民主党は)いったい何を喜んでいるのか。敗北か?降伏か?イラクで喜んでいるのはわれわれの敵だけだ」。
これらの発言がブッシュによるものだったとしても、違和感は全くない。
第二は、弱みを局面打開のきっかけにしようとする戦略である。
ブッシュの不人気なイラク政策への支持は、マケインの選挙運動が不調である大きな理由だとみなされている。それでもマケインは、あえて弱そうな手札への掛け金を積み増すような行為に出た(Shear, Michael D., "McCain to Stake Bid On Need to Win in Iraq", Washington Post, April 7, 2007)。その上で、イラク戦争批判を強みにしているはずの民主党を、「彼らこそが戦争を失敗に導く現況だ」と痛烈に批判してもいる。
弱みを強みにすりかえる。これこそ「ブッシュ流(カール・ローブ流)」である。
第三に、「政治的な風向きを気にせずに、信念に基づいて行動する」という主張である。
11日の演説でマケインは、ブッシュのイラク政策を支持するのは、政治的な計算とは無縁の決断だと強調している。そしてマケインは、「(イラク問題を)民主党は政治的なチャンスだと考え、共和党は政治的な重荷だと受け止めている」と揶揄する。
「世論調査など気にもかけない」という、ブッシュ大統領の得意のポーズを思い出してしまう。
2000年の選挙でマケインは、主流派のブッシュに歯向かい、完全につぶされた。今回の選挙では、マケインは主流派としての戦いを選んだ。だからこそ、仇敵ブッシュのイラク政策も支持出来た。
マケインの選択は裏目に出ているように見える。主流派に近寄ったために、「誇り高き反逆者」というイメージには傷がついた。無党派層に対する魅力が低下しただけで、主流派は未だに2000年の裏切りを許していない。そして、ブッシュのイラク政策の不人気さは、マケインをも底なし沼にひきずりこんでいくように見える。
それでも当初の方針を貫こうとする頑固さ。そこにもまた、マケインとブッシュの類似点が浮かび上がる。
頑固さと断固としたリーダーシップは紙一重。問題は時代が求めるリーダーシップ像である。
マケインは、上院の「一匹狼」として知られてきた。頑固さは今に始まったことではない。そして、その自分の貫き方に評価を下すことこそが、有権者が向き合わなければならない課題である。
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