2007/04/23

ブーマー世代は何が違う?

ベビー・ブーマー世代は特別なのか。それとも、そうではないのか。興味深い記事を2つとりあげたい。

最初の記事はブーマー世代の「特別さ」を取り上げている。それも良くない文脈で。

話題は健康である。

Washington Post紙は、ブーマー世代について、「親の世代よりも不健康な状況で退職年齢を迎える初めての世代」になりかねないと指摘している(Stein, Rob, “Baby Boomers Appear to Be Less Healthy Than Parents”, Washington Post, April 20, 2007)。階段の上り下りといった日常の行動に難しさを訴えたり、高血圧や糖尿病といった生活習慣病に苦しんでいたりする傾向が強いというのがその理由である。加えて、こうした問題の根元には、肥満があるとも指摘されている。

「不健康なブーマー世代」というのは、米国の一般的な感覚からは意外な事実であるらしい。ブーマー世代は学歴も高く、ジム通いをするなど、健康増進にも自覚的だという印象があるからだ。ブーマー世代の健康に関する意識をフォローしてきたHealth and Retirement Studyという調査に携わってきた研究者は、ブーマー世代がこれに先立つ世代よりも健康上の問題を訴える割合が大きいことに、ショックを受けたという。

Washington Post紙は、ブーマー世代と前の世代との大きな違いとして、ストレスの大きさを挙げる。ハードワークと雇用の不安定さ、そして、社会的な孤立。核家族化が進む中で、大家族によるサポートも少なくなった。

ブーマー世代の不健康さは、本人達にとって不幸であるというだけの問題ではない。介護が必要な老人が増えれば、国が費やさなければならない医療費が膨らむ。ブーマー世代は退職年齢にさしかかり始めたばかりであり、そのインパクトが本格的に顕在化するのはこれからである。

次の記事は、ブーマー世代は「前の世代とは変わらない」と指摘する。ただし、今度は良い方向での評価である。

今度は「住むところ」についての話である。

日本でもそうだが、子供が独立した後の親の世代は、郊外の大きな家を売り払って、都心に回帰するのではないかという見方がある。実際に米国では、都心にブーマー世代を狙った高級マンションを開発するケースが目立つ。

しかし、New America FoundationのJoel Kotkinは、実際には、ブーマー世代は郊外に住み続ける傾向があるようだと指摘する。例えば、50歳以上の郊外居住者が引っ越しをした場合、その8割は同じような郊外への引っ越しであり、都心に移った割合は1割程度だという(Kotkin, Joel, “Suburban Idyll”, Wall Street Journal, April 19, 2007)。

背景には様々な理由が考えられる。退職後も在宅で働こうとした場合、都心の狭い住居では都合が悪い。また、長年郊外で暮らしていると、いまさら都会の喧噪には耐えられない。

Kotkinが注目するのは、ブーマー世代に家族や社会とのつながりを求める機運がある点だ。だからこそブーマー世代は、住み慣れた郊外を離れたがらないというのが、彼の見立てである。

一般的にブーマー世代は、「自分中心(me-first)な世代」といわれてきた。しかし、ブーマー世代には子供の近くに住み続けたいという思いがあり、「子供が戻ってきたら暖かく迎えたい」とする割合も高いという。Kotkinは、ブーマー世代が家族や社会の絆を支える役割を果たせれば、それこそが次世代への大きな贈り物になるという。

なるほど、いろいろな見方があるものだ。「自分中心」で「健康オタク」だというブーマー世代のイメージは、必ずしも正しくない。CSN&YのTeach Your Childrenじゃないが、突き詰めていえば、「みんな年をとってきた」ということなのかもしれない。

…おや、誰ですか。「子供が戻ってきたら」なんて望むこと自体が「自分中心だ」なんていうのは…

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