選挙に勝つには「見た目」が何割?
これだけ情報が氾濫しているなかで、ブログにまで情報源を広げていたらキリがないが、たまたま面白い記事に出くわしてしまったので。
Huffington Postは、有名なリベラル・民主党系サイト。そこに掲載されたのが、「最後は政策の勝負」なんて考えていると、民主党は足をすくわれるという警告である(Neffinger, John, "Democrats vs. Science: Why We're So Damn Good at Losing Elections", The Huffington Post, April 2, 2007)。
ニュー・ディール以来の自負があるのか、民主党系の識者は、共和党を政策面では軽量級だと見下しがちである。共和党と違い、民主党はイデオロギーにしばられず、科学的根拠に基づいた豊富なアイディアを提案しているというわけだ。
しかしNeffingerは、浮動票に投票してもらうには、政策ではなく優れたコミュニケーターであるかどうかが鍵になると指摘する。しかも、その根拠は科学的な調査に裏付けられており、その現実から目を逸すのは、「地球は平らだと言い張るようなもの」だというのだから、「科学的根拠の重視」を謳うリベラル派とすれば聞き捨てならない。
取り上げられているのは、3つの調査結果である。まず、National Election Studyのデータによれば、有権者の投票行動は、候補者の政策に対する意見よりも個々の候補者に対する感じ方との連動性が高い。また、Princeton大学の調査では、有権者は全く知らない候補者2人の写真をみせられただけで、70%の割合で勝者を言い当てる。さらに、ハーバードの研究者による調査では、候補者の演説に関する無声のビデオをみせられた場合でも、何の情報もない場合と比較すると、聴衆が勝者を予測できる割合はかなり高まったという。
Naffingerは、こうした結果を理由にこう解釈する。有権者は政策よりも「感じ方」で投票先を決める。その「感じ方」は、態度や仕草、表情といった「見た目」で決まる。
さらにNaffingerは、民主党の問題点を2点指摘する。第一に、民主党は政策が大事であることを知っているだけに、有権者がそう思っていないとはにわかには信じられない。だからコミュニケーションへの力の入れ方で共和党に遅れをとる。第二に、民主党は「有権者が政策よりも『見た目』を重視するなんて不条理だ」と考えがちだが、それこそが不条理である。政策の違いは、丁寧に選挙戦を追わなければわからない。そもそも浮動票というのは、特定のスタンスに思い入れがないわけだから、そこまで政策には詳しくなれない。そうであれば、自分が判断できる材料=見た目で投票先を決めるのは、極めて自然な行動である。
こうした議論自体は、自分に引き寄せて考えて見ても、それほど違和感のある内容ではない。そもそも、テレビ映りの重要性を知らしめたのは、民主党(ケネディ)だった。
むしろ感じるのは、民主党の焦りである。ローブ恐怖症といっても良いかもしれない。
民主党には、政策では勝っている筈なのに、なぜ共和党に負け続けてきたのだろうという思いがあるのではないだろうか。だいたい、昨年の中間選挙にしても、民主党は政策で勝ったとは思っていないだろう。
政策に頼るのはナイーブに過ぎる。共和党のように冷徹に政治ゲームを繰り広げなければ、選挙には勝てない。民主党のローブはどこにいるのか。そんな焦りを感じてしまう。
もちろん、「政策オタク(Policy Wonk)か政治屋(Political Hack)か」というのは、ワシントンでは伝統的な論争ではある。しかし、ブッシュ政権の政治偏重の罪が問われているこのタイミングだ。
つくづく、一度始まったゲームはなかなか終わらないものである。
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