お客様は神様です
候補者の「強み」はどこにあるのか。一つの手法は世論調査から探ることだ。CNN/Gallupが3月23~25日に実施した世論調査は、その辺の事情を垣間見せてくれた。
各党の予備選挙に関していえば、民主党は①ヒラリー(35%)、②オバマ(22%)、③ゴア(17%)、④エドワーズ(14%)と並びは前回(3月2~4日実施)と変わらず。特筆されるのは上位3人の数字がほとんど前回から変わっていないのに対して、エドワーズ(前回9%)が大きく伸ばしたこと。夫人の癌再発公表が効いているのだろうか。
他方の共和党は、①ジュリアーニ(31%)、②マッケイン(22%)、③トンプソン(12%)。新たに選択肢に加えられたトンプソンがいきなり3位だ。他方で数字を大きく減らしたのがジュリアーニ(前回44%)とロムニー(同8%→今回3%)。ジュリアーニについては、一時の熱狂がやや収まってきた気配がある。ロムニーに至っては上位3人だけでなく、ギングリッチ(今回8%)にまで離された。...でもビッグ3なんだよなあ。
今回の調査が面白いのは、それぞれの候補者を対峙させて、なぜその候補者を選んだかという理由を調査しているところだ。
たとえば共和党のマッケインとジュリアーニ。「両者のどちらを選ぶか」という質問に関しては、54%がジュリアーニ、39%がマッケインを選んでいる。
ではジュリアーニを選んだ理由は何か。18%が9-11・テロ対処の手腕、13%がリーダーシップ、10%がNY市長としての実績を挙げている。ジュリアーニの強みが「9-11をシンボルとしたリーダーシップへの評価」なのは歴然だ。
他方で、マッケインの最大の強みは「経験」のようだ。具体的には、「経験がある」が19%、「軍事的なバックグラウンド・国防に強い」が16%である。また、「(ジュリアーニよりも)よく知っている」が18%となっており、ジュリアーニの8%を大きく上回った。
興味深いのは「政策」に対する評価だ。ジュリアーニについては、「争点に対する態度」を支持した理由にあげたのは10%に過ぎない。他方でマッケインは、「(社会政策を除く)争点に対する態度」が16%、「社会政策」についてでも11%とジュリアーニを上回った。これだけみると、マッケインは「政策」が一つの強みになっているように見える。
ところが、ジュリアーニ支持者の回答をよく見ると、マッケインは「穏健派過ぎる/一匹狼過ぎる」という回答が10%もある。ジュリアーニだって十分「穏健」なのにこの結果だ。
この辺を捉えてWashington Post紙は、「マッケイン陣営は2000年の大統領選挙の時から、『真の保守ではない』という印象を払拭すべく奮闘してきたが、共和党支持者のある部分はマッケイン陣営の言うことを信用していないようにみえる」と指摘している(Cllizza, Chris, "Parsing the Polls: The "First Impressions" Problem", Washington Post, March 28, 2007)。
民主党はどうか。ヒラリーとオバマの二者択一の場合、ヒラリーを選ぶのが56%、オバマが37%である。
ヒラリーの強みはマッケインに似ている。選んだ理由をみていくと、「経験」が33%、「争点に対する態度」が21%を占めている。「最強のファースト・レディー」「2期目に入った上院議員」という経歴を考えれば、当然といっても良いだろう。
すごいのはオバマだ。なんと、「ヒラリーよりも好き/ヒラリーが嫌い」が18%、「ヒラリーは問題を抱えすぎている/クリントンはもう結構」が12%、「ヒラリーよりも分裂を招かない」が7%もある。さらに、「女性大統領はまだ早い」が7%、「(ヒラリーよりも)大統領に当選する可能性が高い」が8%だ。
ポジティブな理由としては、「争点に対する態度(18%)」「新鮮な顔/新しいアイディア(13%)」があるが、それにしても「アンチ・ヒラリー」がここまで多いのは、あまりといえばあまりな結果である。
オバマはまだまだ知られていない。一方で、ヒラリーに対する「態度」はずいぶん固まってしまっている。
どうやってお客様の財布を開かせるのか。双方の陣営にとって、課題と挑戦がよく見える調査結果ではある。
2 件のコメント:
ビルクリントンに対する好感度(約50%)の方がヒラリー(約30%)よりも高いというNYTの調査があった気がします。ヒラリー陣営は今までビルからある程度距離を置いて、候補者ヒラリーとして有権者に見てもらおうする戦略をとってきていたようですが、今後もアンチヒラリー色が弱まらない状況が続くようなら、旦那を前面に押し出す戦略に切り替えるかもしれませんね。しかしそれもまたヒラリーの選挙コンサル頼り・計算高さを印象づけるだけの結果に終わる可能性もありますが。
ありがとうございます。実際にヒラリー陣営は、クリントンを早めに投入する戦術に出ているようです。一つには、第一四半期の資金集めででかい数字をだしたかったというのがあるのでしょう。ここら辺の事情については、近いうちに触れたいと思っています。
コメントを投稿