2007/03/22

ざわざわと...Three Things to Watch

米国政治には、ざわざわとした落ち着かなさが漂ってきた。週後半から来週にかけて、3つの動きに注目だ。

1.エドワーズ

足元で一番気になるのは、22日の正午に急遽開かれることになった、エドワーズの記者会見である(Nagourney, Adam, "Edwards and Wife Plan News Conference", New York Times, March 21, 2007)。

事前の報道によれば、良いニュースではないらしい。

会見にはエリザベス夫人が同席する。夫人は乳癌を患った経験がある。21日にエドワーズはアイオワでの遊説をキャンセルし、夫人の経過診察に付き添った。22日の会見が発表されたのは、その日の夜である。

エリザベス夫人の癌は、2004年の大統領選挙中に検査を受け、まさにケリーが敗北宣言をした当日に医師に罹病を告げられたという経緯がある。今回の選挙でエドワーズは、医師が夫人の病状にお墨付きを与えたので、出馬に踏み切っている。

これまでのところエドワーズは、イラク戦争批判やポピュリズム的な主張で、民主党ビッグ3の「左側」に位置している。縁起でもないが、仮に一時的にでもエドワーズが選挙戦から消えれば、「左」に大きな力の空白が生まれる。

そして、力の空白は政治がもっとも嫌う現象だ。既存の候補(オバマ?)が空白に浸食するのか。それとも、新顔(オゾン・マン?)が、空白に引き寄せられるのか。そういえば、ゴアの主張は、エドワーズに近い。ゴアは2000年の選挙でPeople vs. Powerfulの議論を展開したし、民主党の有力者では、イラク戦争への反対を明確にするのも早かった。

ともあれ、こんな空想が無駄になるような会見であること祈りたい。

2.イラク

来週は4月のイースター休会を前にした最後の週。必然的に、民主党議会のイラク戦争対策は山場を迎える。

23日には、下院本会議で補正予算の採決が予定されている。条件付きの戦費承認(コンディション)と、撤退スケジュール(マイルストーン)を含む法案だ。21日の時点では、民主党は可決に必要な票を集め切れていない。22日に予定されていた採決が一日遅らされたのは、こうした事情がある。

一方の上院でも、民主党は補正予算に撤退期日を書き込む方向で動き始めた。相変わらず共和党のフィリバスターを破る60票は集まっていないが、前回の決議案に反対した民主党議員のうち、ネルソン議員は賛成に回る模様(Murray, Shailagh, "Senate Democrats Float War Bill Similar to That in House", Washington Post, March 22, 2007)。もう一人のプライヤー議員も、週末に態度を決めると含みを持たせている。

採決の行方はどうであれ、議論の結果を持って議員は地元に帰る。政権も拒否権があるとはいえ、補正予算が必要なのも事実だ。どんな地元の声を吸い上げて、議員はワシントンに帰って来るのか。勝負はそれからだ。

3.連邦検察官問題

これまであまり触れる機会がなかったが、連邦検察官の人事を巡る政争が日に日に大きくなっている。

きっかけは、ブッシュ政権関係者が政治的な理由で、検察官人事に介入したという疑惑。共和党議員では、ニューメキシコのウィルソン下院議員やドメニチ上院議員が、電話等で圧力をかけたと名指しされているが、議会民主党には、ローブ補佐官等の政権関係者を議会に召喚しようとする動きがある。政権は、大統領特権を後ろ盾に、無条件の召喚には応じない構えだ(Weisman, Jonathan and Paul Kane, "House Panel Authorizes Subpoenas Of Officials", Washington Post, March 22, 2007)。

政権が抵抗するのは、「ローブを守るため」というような単純な理由からだけではない。ここには、もっと構造的な議会と政権の緊張関係が反映されている。政権の反応は、たとえ議会を民主党に支配されても、自らの「権力」は譲らないという意思表示なのである(Stolberg, Sherly Gay, "Bush’s Big-Picture Battle: Presidential Prerogatives", New York Times, March 22, 2007)。

三権分立が厳格な米国では、議会と行政府は常に微妙な力関係にある。特にブッシュ政権は、行政府の権限を強化しようとしてきた。チェイニー副大統領が主催したエネルギー政策立案に関するタスク・フォースでは、その情報公開の度合いを巡って、議会(会計検査院)と裁判で戦ったりもしている。

こうしたなかで、議会による召還・公聴会の威力は、民主党が中間選挙で勝利した時点から、政権の最大の脅威になるとみられていた。イラク戦争の議論に典型的なように、民主党は単独で法律を通すには票が足りない。しかし、公聴会で政権を叩くのは可能だ。実際に、最近の議会では、民主党が政権の行政運営を監視するような公聴会が盛んに開かれている。

議会関係者の召還は、こうした両者の緊張関係の「本丸」である。まして、からんでいるのが「三権」のもう一つ、司法である。ゴンザレス司法長官の辞任は秒読みとの見方も根強い。両者共にどこかで落とし所を探るとは思うが、この問題が長引けば、議会民主党と政権・共和党の関係は結果的に悪化する。

政治的なインプリケーションは、ひょっとするとイラク戦争と同じくらい大きいかもしれない。

と、落ち着かなさが立ち上ってきたところで恐縮ですが、4日ほど更新できない環境に置かれます。次の更新は27日(火)以降になります。どうかご容赦いただきまして、また戻ってきていただけたら幸いです。

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