2007/03/27

Just One Wish

23日に下院で行われたイラク戦費関連の補正予算に対する採決は、極めて党派的な結果に終わった。しかし、一皮向けば、議会民主党と共和党のイラク戦争に対する考え方は、案外近いのかも知れない。「これはあくまでもブッシュの戦争だ」という思いである。

23日の採決では、米軍の撤退期日を書き込んだ法案が、賛成218-反対212の僅差で可決された。党内反戦派の取りまとめに苦心していたペロシ議長にとっては大きな勝利だ。

民主党に関しては次の機会に譲るとして、注目したいのは共和党の雰囲気である。

23日の採決では、共和党はほぼ一致して反対票を投じた。賛成に回った共和党議員は2人しかいない。しかし、この結果は、共和党がブッシュ支持でまとまっていることを意味しない。共和党がまとまれたのは、「兵士は危険に晒せない」という大義名文があったからだ。仮に政権のイラク政策に対する信任投票というフレーミングであれば、結果は全く違っていたと指摘されている(Murray, Shailagh and Jonathan Weisman, "Republicans Soften Stance on Pullout Language", Washington Post, March 27, 2007)。むしろ、民主党と一緒になって戦費に条件をつけてしまうと、議会共和党も一歩戦争に噛み込んでしまうという計算が、共和党をまとまらせた側面があるだろう。

そう考えると、一見下院とは矛盾する上院共和党の動きも説明が付きやすい。上院共和党のマコネル院内総務は、条件付きの補正予算に対して、フィリバスターを使った抵抗をしない方針を示唆した。民主党にはフィリバスターを破る60票はない。しかし、上院共和党は、敢えて過半数での補正予算の可決を許し、大統領に拒否権でこれを葬り去らせるというのだ。

今週予定される上院での採決では、共和党は撤退期日に関する部分を補正予算から外せるかも知れない。しかし、下院との内容の相違を調整する両院協議会では、下院が撤退期日を盛り込むよう求めるだろう。そうなれば、上院は大統領に下駄を預ける。

マコネル議員は、しょせん成立する見込みのない法案(民主党は拒否権を覆せない)に時間をかけるべきではないと主張する。「法律を大統領のところに送り、拒否権の問題を終えてしまうべきだ(Zeleny, Jeff, "Republicans to Rely on President Bush’s Veto to Block Troop Withdrawal Plan", New York Times, March 27, 2007)」

しかし同時に、拒否権で葬らせるという選択には、最後の刻印はあくまでも大統領に捺させるという意味がある。

結局のところ、補正予算に条件をつけるべきではないとう共和党の主張は、「責任は大統領が負うべきだ」という思いにつながる。上院で撤退期日部分を削除する修正条項を提案している共和党のコクラン議員は、イラクは究極的にはブッシュの戦争であり、共和党も民主党も介入すればリスクを負うと指摘する。「彼(大統領)と現地の司令官たちに勝利への道をみつけさせるべきだ(Murray et al, ibid)」という主張である。

共和党議員には、「われわれは大統領のために十分にまとまってきた。けれど、何の感謝もされない。多かれ少なかれ、共和党議員は感謝の念を持たない大統領を擁護するのにうんざりしている」という思いがあるという。こうしたなかで大統領は、来週からの議会休会を前に、共和党の下院議員をホワイトハウスに招き、民主党への抵抗を続けるよう激励する予定だ(Murray et al, ibid)。

いずれにしても、大統領は何らかの形で補正予算を獲得しなければならない。民主党との関係に関していえば、固い態度を取り続けていれば、互いに降りる場所を見失う。連邦検察官人事の問題も併せて、議会民主党と大統領の関係はチキン・ゲームの様相を呈し始めた。

しかし同時に、同じ2つの問題を契機に、大統領と議会共和党の関係も微妙な段階に差し掛かっていることは見逃せない。大統領にとって、真の脅威は共和党議員の決定的な離反なのである。

「携帯からでも…」などと大口を叩きましたが、全く駄目でした。お恥ずかしい限りです。今日もまだ全速力には復帰出来ていませんが、早く体制を立て直すよう精進致します。長い目でおつきあい下さい。

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