2007/03/02

民主党の迷走:だから、それを日本では「漁夫の利」というんだって

イラク戦争を巡り、民主党の迷走が続いている。ブッシュ政権の増派路線には有権者の強い支持はないが、むしろダメージを受けているのは民主党議会のようにみえる。

状況を整理しておこう。今ある民主党のプランは2つ。下院では、マーサ議員の発案で、補正予算を認めつつも、その使用に条件をつけることが模索されている。一方の上院では、武力行使容認決議の見直しの方向で、議論が進められようとしている。

しかし、いずれのプランについても、党内の意見が割れている。

反戦派は、いずれのプランも不十分だと主張する。

下院のウーズリー議員は、条件付きの戦費容認について、「民主党が戦費を認めてしまえば、自分たちの戦争になってしまう」と述べる(Zeleny, Jeff and Robin Toner, "Divided Congress Prepares to Debate Financing and Strategy for Iraq War", New York Times, February 28, 2007)。上院のファインゴールド議員は、議会が武力行使に関する新たな決議をすれば、大統領はそれを戦闘行動の容認と解釈しかねないとする。「撤退しなければいけない時にイラクでの新しい軍事的な役割を作り出すなんて馬鹿げている。自分は最初の決議にも賛成しなかったし、今さら決議に賛成したらおしまいだ(Weisman, Jonathan and Shailagh Murray, "Iraq Bill Vexes Democrats", Washington Post, February 28, 2007)」「国民はイラクでの役割を見直してくれと頼んでいるわけじゃない。終わりにして欲しいと思っているのだ(Levey, Noam N. and Richard Simon, "War bill divides Democrats", Los Angels Times, February 28, 2007)」。

反戦派の強硬姿勢は、草の根の反戦活動に支えられている。数週間前に増派反対決議が議論されていた頃には、草の根団体の標的は共和党議員だった。ところが最近では、「弱腰な民主党議員」に圧力をかけ始めている。「彼らの後退ぶりは世界記録級のスピードだ(Leavey et al., ibid)」。

しかし党内には慎重派も残っている。ネルソン上院議員は、「現実を前にして、(議会が)細部まで口をだすのを避けながら、物事を変えていくのは難しい」と述べる(Leavey et al., ibid)。タナー下院議員はこう言う。「国民には相反する感情がある。3年半続けてきたやり方をそのままにはしたくないが、だからといって、プラグを抜いてしまいたくもない(Weisman et al, ibid)」

実のところ、慎重派も反戦派と願いは同じ。イラク戦争を「ブッシュの戦争」にとどめておきたいのだ。戦費の制限に動けば、「民主党議会のせいで、イラク戦争は失敗した」という議論が可能になる。「ブッシュの戦争」が「民主党の戦争」になっては困る。だから、下院の民主党指導部が探っている妥協点は、補正予算に条件をつけた上で、大統領に適用除外を求める余地を残すこと。そうすれば、「大統領は自分の名前を残さざるを得なくなる(エマニュエル下院議員)」という計算だ(Zeleny et al, ibid)。

しかし、仮に上下両院で民主党がそれぞれの解決策で決着できたとしても、上院と下院は、それぞれまったく違う路線に取り組んでいる。両者の調整はどうするのだろうか。

個人プレーも民主党にとって障害だ。マーサ下院議員の根回し不足にはすでに触れたが、上院で武力行使容認決議の見直しを主張しているバイデン議員も、根回し不足を攻められている。「大統領選挙の候補者が、新聞の見出しを狙った(上院議員スタッフ)」というのだ(Bresnahan, John, "Democrats Snipe at Senate Leaders Over Handling of Iraq Issue", Politico.com, February 27, 2007)。

道のりは遠い。

ほくそ笑んでいるのは共和党だ。コーニン上院議員は、「どうやら民主党は自分たちの議論を片付けなければならないようだ」と余裕(Leavey et al., ibid)。議員スタッフからは、「続かないかもしれないが、ここしばらくで最高なのは確実だ」なんて声もきかれる(Bresnahan, ibid)。

民主党のリード上院院内総務は「個人的にはどんな良い代替策もないと思う。われわれはより悪くなく、より危険でない代替案を選ぶプロセスにある」と述べている(Zeleny et al, ibid)。

まあ、こんな顔をみせられたら、同情の一つもしたくなるところではある。

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