2007/03/09

be careful what you wish for...(you just might get it.)

イラク戦争に関する民主党の対案が明らかになった。

概要は既報の通りの二本立て(コンディション&マイルストーン)。昨日は情報が錯綜していた撤退時期の部分だけ整理しておくと、政権は今年の7月と10月にマイルストーンの達成状況を報告、未達の場合には6ヶ月かけた撤退を始めることになる。達成の場合でも、今度は理屈として米軍の役割が無くなるので、来年3月からやはり6ヶ月かけた撤退がスタートする、といった内容のようだ(Weisman, Jonathan and Shailagh Murray, "Bush Threatens to Veto Democrats' Iraq Plan", Washington Post, March 9, 2007. Zeleny, Jeff and Robin Toner, "Democrats Rally Behind a Pullout From Iraq in ’08", New York Times, March 9, 2007)。

政治的には、民主党の方が厳しい状況にあることに変わりはない。依然として党内は割れており、下院での可決すら確実とはいえない。弱腰批判を恐れる中道派よりも、「この程度では手ぬるい」という反戦派をどう抱き込むかがポイントになる。

一方の共和党にしてみれば、ここまでは思い通りの展開といって良いだろう。国民の支持が弱い戦費打ち切りの議論(3月2~5日実施のWSJ調査では反対が48%)に持ち込み、民主党の内紛を際立たせた。

しかし、そろそろ一歩引いて、少々長い視点で状況を眺めた方が良い。3つの視点がある。

第一に、共和党の正念場は必ずやってくる。

米国民は、共和党を支持している訳ではない。共和党は、民主党の対案を「敗北への処方箋」だと批判する。しかし、そもそも世論調査では、「イラク戦争には勝てそうにない」という回答が多数である(同69%)。議会の出方にしても、増派阻止への圧力が弱すぎるという懸念が多い(同51%)。

結局のところ、共和党の命運は、増派の結果にかかっている。特に、民主党が増派に歯止めをかけられなければ、増派の結果に対する責任は、政権と共和党が一手に引き受けることになる。逆に言えば、民主党にすれば、実質的に増派を止められなかったとしても、「増派を推進したのは政権と共和党だ」という記録を残せれば、それだけでも価値があったという局面も訪れ得る。

第二に、共和党がイラク戦争で民主党を追い込めば、それだけその他の分野での協力が難しくなる。ブッシュ政権は、国内政策でもレガシーを残したいところだったが、その道のりは一層厳しくなった。

今は良くても、共和党にとっては、思い通りに進んだことの代償は意外に重いかもしれない。

第三に、大統領選挙の候補者も慎重な戦略が必要だ。

現時点では、イラク戦争への態度が、選挙戦最大の争点だが、民主党のラインに流れが近付けば、選挙戦と並行して、撤退が進むかも知れない。そうなれば、選挙の絵柄もガラッと変わりかねない。

本来であれば、新しい大統領を目指す者にとっては、ブッシュ政権のうちにイラク戦争に目処が立つのは望ましい展開の筈である。しかし、いざその望みがかなった時への備えがあるかどうかが、ホワイトハウスの勝者を決める要因になるかもしれない。

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