2007/03/18

じりじりと状況は動いている

3月15日に、上院は民主党が提案したイラクに関する決議案(S.J.Res. 9)を否決した。2008年3月31日までに米兵を撤退させるという内容。賛成48票、反対50票だった。

一見すると過半数をとれなかったのだから、民主党指導部にとっての敗北にみえる。しかし、内実は両党ともにもっと緊迫している。

重要なのは投票自体が行われたという点だ。下院が増派反対決議を採択した際には、上院は投票にすら進めなかった。共和党が投票に応じる条件に、「軍隊に必要な戦費は削らない」というグレッグ上院議員提案の決議を同時に採択するよう求め、民主党がこれを拒否したというのが表向きの理由だった。

ところが今回は、民主党がグレッグ決議案(S.Con.Res. 20)の採決に同意したことで、民主党側の決議案も採決に持ち込まれた。

これはどちらの譲歩なのか。

たしかに民主党は、戦費の議論に駒を進めにくくなるような、グレッグ決議案の採択に同意した。同決議案は82-16の圧倒的多数で可決されている。

しかし下院と違い、上院民主党はそもそも補正予算自体に条件をつけるつもりはない。実際に、オバマ上院議員にいわせれば、いずれにしてもブッシュ大統領は増派を強行するというのが上院民主党の理解だ。そうであれば、「結局苦しむのは米兵だ」(Distaso, John, “Obama: NH won't be hurt by primary plan”, New Hampshire Union Leader, March 14, 2007)。

むしろ、民主党の狙いはとにかく投票を行い、共和党議員に圧力をかけること。上下両院が別の方向を向いており、いずれにしても大統領が増派に踏み切るのであれば、決議案が採択されようと否決されようと大きな違いはない。

ただし問題は反戦派との関係。増派を止められない民主党の現状に、かなり不満は高まってきているはずだ。

厳しいのは共和党も同様だ。ここまでは「妨害戦術」で上手くやってきた。しかし共和党も、妨害だけでは持たなくなってきている。だからこそ、今回は投票に応じたのだろう。

現時点では共和党内に分裂の兆しはみられない。民主党の決議案に賛成した共和党上院議員は、オレゴンのスミス議員だけだ。むしろ民主党側からは、ネブラスカのジョンソン議員とアーカンソーのプライヤー議員、いうまでもないがリーバーマン議員が反対に回った。

それでも、2年後に再選を控えた共和党議員の中には、「政権のイラク政策には反対だ」とする議員もいる。今回の決議に反対したのは、「民主党のタイム・テーブルが非現実的だから(メインのコリンズ議員)」(Toner, Robin and Jeff Zeleny, “Senate Rejects Measure for Iraq Pullout”, New York Times, March 15, 2007)。こうした議員にとっては、記録の残る投票が繰り返されるのは辛い。

4月のイースター休暇で議員は地元に戻る。どんな声を吸い上げてワシントンに戻ってくるのか。それが再開後の議会の風向きを左右する。

ところで、上院議員は100人。民主党の決議案に投票していない議員が2人いる。一人は長期病欠中のジョンソン議員。もう一人は、アイオワで遊説中のマッケイン議員である。

さすが一匹狼。ここまで来ると徹底している。

伊達にMarch Madnessはやっていない(しつこい)。

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