トンプソンズ
仕事でもそうだが、自分はタイトルが上手くはまらないと満足の行く文章が書けない。それどころか、内容よりも先にタイトルを思いついてしまって、無理やり文章を書いてしまうときすらある。
悪い癖である。
フレッド・トンプソン元上院議員の出馬が噂される中で、ブッシュ政権で厚生長官を務めたトミー・トンプソンが共和党の予備選挙への参戦を表明した。
もっとも、米国でのトンプソンは、元厚生長官というよりも、元ウィスコンシン州知事として知られているかもしれない。90年代の米国で、トンプソンは改革派知事の代表格といわれていた。福祉政策や教育分野での先進的な取り組みは有名で、Power to the People: An American State at Work なんていう、いかにもそれっぽいタイトルの本も書いている。
米国では、州知事は大統領の登竜門。実務能力と指導力が期待できる上に、アウトサイダーとしての魅力も強みになる。最近の大統領をみても、カーター(ジョージア)、レーガン(カリフォルニア)、一人飛ばして、クリントン(アーカンソー)、ブッシュ(テキサス)と、州知事出身の大統領が大半だ。ましてトンプソンの場合、厚生長官も経験しているわけだから、国内政策では医療保険が大きな論点となるといわれる今回の選挙には、もってこいの人材にみえる。
しかし今回の選挙戦では、州知事の存在感は極めて小さい。民主党ではリチャードソン(ニュー・メキシコ)、共和党ではロムニー(マサチューセッツ)、ハッカビー(アーカンソー)がいるが、リチャードソンやハッカビーはもちろん、ビッグ3の一角といわれるロムニーですら、現時点での支持率は低い。有力候補といわれた民主党のジョン・ワーナー(バージニア)、イヴァン・バイ(インディアナ)は早々に姿を消した。
他にも大統領選挙での活躍を噂された知事はいた。共和党では、サウス・カロライナのマーク・サンフォード、ミネソタのティム・ポーレンティー、ミシシッピのハリー・バーバー、ニューヨークのジョージ・パタキなどがいる。民主党はやや手薄だが、それでも、カンサスのキャサリン・シベリウス、ルイジアナのキャサリン・ブランコ、アリゾナのジャネット・ナポリターノといった女性知事は面白い存在だった。
仕方のない人材もいる。カリフォルニアのアーノルド・シュワルツェネッガー(共和党)や、ミシガンのジェニファー・グランホルム(民主党)は、国籍の関係で大統領にはなれない。フロリダのジェフ・ブッシュは、ブッシュという名前だから大統領選挙には出たくない。
もちろん、これから副大統領として名前があがる人材はいるだろう。実際にロムニーは、ジェフ・ブッシュやサンフォードを候補にあげている(Kornreich, Lauren and Steve Brusk, ”Romney: Drop "Bush" and Jeb is the winner”, CNN, March 30, 2007)。さながら「知事連合」の趣だ。また、ポーレンティーはマッケイン陣営の重要メンバーである。
それにしても、米国の州政府が、「民主主義の実験室」としてさまざまな分野で連邦政府に先駆けた取り組みを進めている現状を鑑みると、大統領選挙での州知事の存在感の低さには、改めて違和感を感じざるを得ない。医療保険にしても温暖化対策にしても、重要課題に真っ先に取り組んでいるのは州政府なのである。
ひょっとすると、州知事の受難はブッシュ政権に原因があるのかもしれない。
実はブッシュ政権は、トンプソンだけでなく、トム・リッジ(ペンシルバニア)初代国土安全保障省長官や、クリスチャン・ウィットマン(ニュージャージー)環境庁長官という、やはり州知事として名を馳せた人材を擁していた。ブッシュ本人だって、超党派の政策運営や教育改革で知られた州知事だ。ミッチ・ダニエルズOMB長官のように、退任後に州知事(インディアナ)になった例もある。
しかしブッシュ政権を「実務に強い」と評価する声はほとんどない。むしろ、その実務能力のなさを攻撃されているのが現実だ。「州知事神話」がブッシュ政権で一旦崩れてしまったとしたら、その罪は大きい。
ところで知事といえば、今日は都知事選挙の投票日。それも知事対決である。ただし、日本では米国のように「おらが地元の知事」が国政に出て行くとういう楽しみがあまりないのが残念だ。
でもって、開票率0%で当確が出てしまうのだから世話はない。
それより何より、選挙期間がめちゃくちゃ短い。日中は会社にいてテレビもみない自分とすれば、「日本で選挙なんてやってるの?」てな感じだ。
まったくもってアイオワの州民がうらやましい。
3 件のコメント:
はじめまして。
カーターはジョージア州の知事だったはずですが。
ありがとうございます。...そうですよね。失礼しました。お恥ずかしい。
早速修正させていただきました。これからもよろしくお願いします!
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