2007/07/17

Keep on Keepin' on:ファンド課税にみるヒラリーとオバマの相乗効果

民主党の予備選挙は、ヒラリーとオバマの一騎打ちの様相が強まっている。それだけに二人の候補者には、お互いの出方を意識したポジショニングが目立つ。こうした力学に変な相乗効果が働くと、民主党のフィールドが左に傾いていく結果にもなりかねない。

ヒラリーは、ヘッジ・ファンドやプライベート・エクイティ・ファンド(以下ファンドと総称)のマネージャーに対する課税強化に賛成する方針を明らかにした(Stout, David, "Clinton Calls for Ending Tax Break to Financiers", New York Times, July 13, 2007)。オバマに遅れること2日。さらに先行していたエドワーズと併せて、民主党の有力候補者の中では、もっとも遅い態度表明であった。

ファンド課税の強化は、それ自体が究極的にはキャピタルゲインに対する軽減税率維持の是非にも絡む重要な論点である。その辺りはいずれこのページでも取り上げるつもりだが、その政治的な意味合いも、なかなか興味深いこの問題を巡っては、民主党の候補者が、「庶民の味方」「格差の是正」といったポピュリスト的な主張と、大事な献金口であるウォール街との板挟みになってしまうからである。例えばヒラリーは、ニューヨーク州選出の上院議員であり、態度表明には慎重にならざるを得なかった。しかし、最大のライバルであるオバマが先に動いたために、ヒラリーの選択肢は著しく狭まった(Berman, Russell, "Clinton Faces Pressure on Hedge Funds", New York Sun, July 12, 2007)。

注目されるのは、詳細は後日に譲るが、ヒラリーがエドワーズと同じボジションを取り、オバマよりも強硬な対策を支持する方針を選んだことだ。既報のように、オバマにしてもファンドとの関係は重要である。実際のところ、ファンドからの献金額はむしろオバマの方がヒラリーよりも多い(Mullins, Brody, "Private Equity Gives More to Republicans", Wall Street Journal, July 17, 2007)。その辺りの配慮がオバマにはあったのかもしれないが、今度はヒラリーが一歩先に進んでしまったことになる。

一歩先んじられたら、直ぐに追いかけて、場合によっては半歩先に抜き返す。かつてイラク戦争に関しても見られた構図である。また最近では、中国に対する通商法案でも、同じような展開があった。6月末に二人の候補者は、「為替操作国」の認定基準を改変するという人民元を標的にした法案に賛成する意向を明らかにした。この時には、まずヒラリーが問題の法案の共同提案者になり、2日後にオバマが続いている。

ヒラリーやオバマのポジショニングには、極端な保護主義や金持ち批判が強まる前に、ある程度のガス抜きを行なっておく必要があるという政策的な判断が反映されているのかもしれない。特にオバマのスタンスには、極端な左傾化を避けようとする意識が感じられるのも事実である。しかし、二人の長すぎるマッチ・レースには、こうした配慮を吹き飛ばしてしまうような力学を生み出しかねないリスクが存在するように思われてならないのである。

0 件のコメント: