2007/07/12

Run, Sara, Run

このページを熱心に読んでいらっしゃる方ならば、ひよっとしたらおやっと思われたかもしれない。11日に上院司法委員会は、連邦判事の不当解雇問題に関する公聴会を開催した。政治的な思惑での解雇が疑われているブッシュ政権の関係者として同委員会に召喚されたのが、ブッシュ政権の若きベテランにしてカール・ローブの腹心。先頃政権を離脱したばかりの、サラ・テイラーである。

この件を報じるWashington Postの記事には、98年のある冬の日に、いかにして若干24歳のテイラーがローブとブッシュ本人にスカウトされたかという、半ば伝説となっている話が取り上げられている。また、「データを分析できる能力」が、テイラーの目覚ましい出世の原動力だったという話も興味深い(Pappu, Sridhar, "A Bush Aide's Long Road From The White House", Washington Post, July 12, 2007)。長期に亘る激務に区切りをつけたかと思いきや、そうは問屋が下ろさなかったようである。

答弁の中でテイラーは、大統領特権の関係で、「答えたくても答えられない」という回答を度々繰り返した。証言拒否は裁判につながる可能性もあるわけで、板挟みになったテイラーに同情的な報道も少なくない。その一方で、テイラーが全ての回答を拒否したわけではないために、そもそも大統領特権の定義が不透明だという批判も聞かれる。中にはテイラーが、自己保身のために大統領特権を恣意的に使っているという見方すらあるようだ(Lithwick, Dahlia, "Rocking the Hard Place", Slate, July 11, 2007)。実際テイラーとしても、ここでの振る舞い方が、将来ワシントンに復帰する時の待遇を左右するという現実がある。良くも悪くも「ローブの腹心」という勲章によって、テイラーにはくっきりとした色がついている。今さら政権に反旗を翻すというのも考え難い展開である。

それにしても、ホワイトハウスを去るにあたって、民主党による調査の動きを察知して、プロフェッショナル用の賠償保険に入っていたとは(しかも、それが弁護士費用には適用されないとは)...何ともはや、今のアメリカを象徴するような出来事である。

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