2007/07/26

My Generation:オバマと世代交代論

オバマとヒラリーの戦いは「変化」と「経験」の争いの様相を強めている。特にオバマ陣営には、こうした絵柄を「ベビーブーマーからの世代交代」になぞらえる傾向があるようだ。

「変化」と「経験」の構図は、7月23日に行われた討論会でも鮮明だった。この討論会でヒラリーは、「誰が初日から国を率いることが出来るのかが重要だ」と主張した。対するオバマも、「有権者はワシントンの変化を切実に求めている」と譲らなかった(Dodge, Catherine and Kim Chipman, "Clinton Touts Experience as Rivals Duck Confrontation", Bloomberg, July 24, 2007)。

両者の立ち位置は、世論調査にも裏打ちされている。Washington PostとABCが実施した世論調査によれば、強いリーダーシップと経験を重視する人の間では、ヒラリーに対する支持がオバマを30ポイント以上引き離している。しかし、変化を重視する人の場合には、両候補への支持はほとんど同程度である。さらに、「変化」を重視する人は51%にのぼり、「強さ・経験」を重視する人(42%)を上回っている(Langer Gary, "Experience Trumps for Clinton; 'New Direction' Keeps Obama Going", ABC News, July 23, 2007)。オバマにすれば、「変化」での相対的な強みを活かすのが、ヒラリーに迫る近道ということになる。

ところでオバマ陣営は、「変化」のメッセージに「世代」を重ね合わせることがある。有権者は「対立の政治」に飽き飽きしている。これから脱却するには、ベビーブーマーからの世代交代が必要だという考え方だ(Broder, John M., "Shushing the Baby Boomers", New York Times, January 21, 2007)。

ベビーブーマーは、反戦や貧困・性の問題など、自らが学生時代に争っていた論点を、そのままワシントンに持って来てしまった。実際に、党派対立が厳しくなったのは、クリントンとブッシュという二人のベビーブーマー世代の大統領の時代である。だから、対立が染み込んだベビーブーマー世代には、新しい政治は始められない。61年生まれのオバマは、ぎりぎりベビーブーマー世代の最後にかかっているが、対立の時代にはまだ若すぎた。対立を超えられるのは、オバマだけなのである。

ベビーブーマー世代は18年。クリントンとブッシュで16年だから、そろそろ潮時だという議論も、あながち荒唐無稽という訳でもない。実際にベビーブーマー世代のなかには、自分達の世代は政治の世界ではろくなことをしてこなかったので、そろそろ退場してしかるべきだという意見もあるようだ。

一方でそんなに単純化できない要素もある。例えば経済政策の部分などでは、クリントンが中道寄りの政策運営を行なったのに対して、ギングリッチ以降に政治に関わり始めたために、対立に負けてきた記憶しかない新しい世代の方が、対立の政治を好んでいるという見方もある。その典型がネット・ルーツである。

何よりも世代交代論の機微なところは、ベビーブーマー世代が有権者の大きな部分を占めているという事実である。自ら後進に道を譲るような度量の広さ(?)に期待するのか。それとも敢えて刺激しないようにするのか。一つの考え所ではあるだろう。

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