マケインの非常事態:Can Dead Man Even Walk ?
このタイトルは陳腐だから避けたいとかねがね思っていたのだが、こうなってしまっては仕方がない。マケイン陣営は、明らかに非常事態にある。ひょっとすると、大統領候補としてのマケインの資質が問われているのかもしれない。
マケイン陣営から主要なスタッフが離脱することになった。離脱が決まったのは、Campaing Managerのテリー・ネルソンとChief Strategistのジョン・ウィーバー。これにPolitial DirectorのRob Jesmer、Deputy Campain ManagerのReed Galen、Finance DirectorのMary Kate Johnsonが続いた。なかでもウィーバーは、マケインの長年の腹心であり友人。今回の離脱は、カーウ゛ィルがクリントンを見限り、ローブがブッシュと袂を分かつようなものだという(Kornblut, Anne E., "McCain Loses Longtime Ally in Campaign Shakeup", Washington Post, July 10, 2007)。
離脱の理由は幾つか指摘されている。表立って強調されているのは、資金繰りの問題である。既に触れたように、マケイン陣営は資金集めに苦戦している。なかでもマケインが不満だったのは、キャンペーンの支出の多さだったという。ブッシュ陣営から招聘されたネルソンは、集金力に物を言わせたブッシュの選挙のように、潤沢にお金を使う戦法を選んだ。しかし、カローラ級の予算でキャデラック級の選挙を戦うのは無理だった(Martin, Jonathan and Mike Allen, "McCain drain: Inside the implosion", Politico, July 10,2007)。
もう一歩深みに降りると、今回の離脱劇には、マケイン陣営の選挙戦略に関する問題が投影されている。今回の選挙をマケインは、主流派の立場で戦おうとした。その象徴がネルソンのブッシュ陣営からのの招聘であり、それを演出したのがウィーバーであった(Cillizza, Chris, "Where McCain Stands Now", Washington Post, July 10, 2007)。しかし現在までのところ、主流派にすり寄る路線は裏目に出ている。「一匹狼」「直言居士」で知られたマケインは、すっかり2000年選挙の頃の輝きを失ってしまった。ネルソンの後任になるリック・デービスは、その2000年選挙でマケイン陣営のCampaign Managerを務めていた人物である。
さらに言えば、今回の事態には、大統領候補としてのマケインの資質が問われている側面がある。報道の中には、今回の離脱劇を陣営内の権力闘争の結果だと評する向きがある。マケイン陣営は指揮系統が混乱しており、主要なスタッフ間の争いが絶えなかったという。「キャンペーンはまるで上院議員のオフィスのように運営されていたが、それでは選挙は戦えない」というコメントもあるほどだ(Martin et al, ibid)。
そこで問われるのは、マケインの管理能力である。今回の選挙は、何よりも「能力」が問われる選挙だという。ベテラン議員のマケインにしても、経験は大きなアピールになる筈だ。しかし、大統領選挙のキャンペーンも統率できないのに、国を率いることができるのだろうか。
かつてマケインを国防長官にしてはどうかと言う議論があった時に、ある識者にそんな選択は有り得ないと言われたことがある。マケインには、国防総省のような複雑な機関を運営する実務能力が決定的に欠けている。それが理由だった。
マケインがケリーのように復活を果たす可能性が消えたわけではない。しかし、潜在的に深刻なのは、来たるべき「マケイン政権」の脆弱性が、思わぬところで露呈してしまったことではないだろうか
0 件のコメント:
コメントを投稿