2007/05/20

イラク:二人のwiggle room

来週は、補正予算に関する議会とブッシュ政権の交渉が山場を迎える。民主党にとっては、撤退期限をもたない妥協案に、どこまで党がまとまれるかが課題である。

エマニュエル下院議員が指摘するように、政権と民主党の立場ははっきりしている。政権は、撤退期限は認めない。民主党は、政権に白紙委任状は与えない(Hulse, Carl and Jeff Zeleny, “Congress and Bush Striving for Compromise on War Funds”, New York Times, May 18, 2007)。

そうであれば、ありそうな落とし所は、ベンチ・マークでの妥協である。

こうした展開は、民主党の反戦派には、フラストレーションが溜まるだろう。曲がりなりにも民主党は、撤退期限を含んだ予算案を、上下両院で可決させている。場合によっては、民主党は割れてしまい、共和党議員の賛成を受けて、補正予算が成立するという展開になるかもしれない。

結局のところ、ワシントンの状況は劇的には動き難い。政権による秋口の「増派」の成果に関する報告、そして来年度予算の審議へと、イラクを巡る議論は続いていく。民主党指導部とすれば、党内の亀裂が修復不可能にならないように、慎重な手綱捌きを心掛けるしかない。

撤退に賛成票を入れた大統領候補者も、柔軟に対応できるような余地は残そうとしている。

オバマは、13日のThis Week(ABC)で、「ベンチ・マークはあるが、撤退期限のない予算に賛成するか」と聞かれ、「内容次第だ」と答えている。

通訳すれば、Yesである。

一方のヒラリーは、撤退に賛成票を投じたのは、「党の団結を示すため」だったと説明している。内容自体への立場は歯切れが悪く、「将来自分がどのような投票をするかを推測する必要はない」とまで述べている。

随分と正直な物言いだ。

反戦派との関係では、オバマやヒラリーが難しい決断を迫れるのは、票読みが緊迫した状況で、撤退に関する法案がもう一度審議された場合である。

二人にしてみれば、ベンチ・マークだけへの投票であれば、政権に圧力をかける一つのステップだという説明ができる。幸いなことに(?)、反戦派の矛先も、撤退に賛成しなかった有力議員(レビン上院議員、ホイヤー下院議員)に向っている(Hulse, et al, ibid)。

ヒラリーは、撤退に関する法案が、もう一度投票にかけられるかどうかはわからないとも述べている。

通訳すれば、「もう一度投票するのは、勘弁して欲しい」ということだ。

そう、少なくとも、秋が来るまでは。

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