チキン・ゲームとReal War
ブッシュ大統領は、予定通りイラク戦費に関する補正予算に拒否権を発動した。その一方で、共和党系の識者からは、やや長めの視点から、共和党の今後を憂う意見が聞かれ始めている。
もちろん、イラクに限らず、ブッシュ大統領は断固として民主党と対決すべきだという意見もある。William Kristolなどはその典型だろう(Kristol, William, "'Kick Me'?", Weekly Standard, April 9, 2007)。時期はやや昔になるが、今年の3月には同じくWeekly StandardのFred Barnesも、ブッシュ大統領がイラクで断固とした姿勢をとっているからこそ、ホワイトハウスの志気が維持できていると主張していた(Barnes, Fred, "Cheerleader in Chief", Weekly Standard, March 19, 2007)。
これに対して、不安を表明する論者は、たとえブッシュが補正予算に関するチキン・ゲームに勝ったとしても、実際の戦場では結果を出せないかもしれないという危機感を持っている(Dvorak, Blake, "Buckley and Will See Doom for GOP", Real Clear Politics, April 30, 2007)。
William Buckleyは、「ペトロースといえども、敵が病の本質にあるのであれば、勝つことはできない」と指摘する。その上でBuckleyは、仮にそうであるならば、「出口の見えない戦いを続ける意思をもつ大統領を抱えて、いかに共和党は多数の有権者から支持を得られるのか」と問い掛ける。
George Willのコメントはもっと刺激的だ。Willは、イラク戦争を大恐慌に喩える。Willに言わせれば、共和党はフーバー大統領が大恐慌で受けた汚名を払拭するのに30~40年かかった。イラク戦争が共和党に与えるダメージは、これに匹敵しかねないというのがWillの警告である。
Willは、増派が9月までに成果を上げられなければ、多くの共和党議員が、大統領と袂を分かつだろうと指摘する。共和党議員は、もう一度イラク戦争をテーマとした選挙は戦いたくないからだ。
こうした指摘を、共和党の支持者はどう考えるのだろうか。共和党議員が大統領を支え続けるのは、共和党のコアな支持者が、イラク戦争の勝利に期待を残しているからだ。しかし、共和党支持者がイラク戦争を見捨てないのは、チームを重視しているからだという指摘もある(Rogers, David, "How Veto Strains the Republicans", Wall Street Journal, May 2, 2007)。チーム・リーダーのブッシュ大統領を支えるのが、チーム・プレーだという発想である。しかし、イラクが「ブッシュの戦争」であり、チーム=共和党を著しく傷付けるとなったらどうだろうか。
戦費を巡る民主党と大統領のチキン・ゲームは、本質的な戦いではない。民主党には単独で大統領の方針を変える力はない。戦場におけるイラクの安定と、共和党議員の覚悟を巡る苦闘こそが、本当の戦いなのである。
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