またしてもイラク!?:where's the goal post ?
暫くはイラク以外の話題にしたかったのだが、節目なので仕方がない。もう一日だけ(?)お付き合い下さい。
22日に、議会民主党指導部とブッシュ政権が補正予算に合意した。
結果は、ほぼ全面的に民主党側の譲歩である。ベンチ・マークは含まれ、復興援助とのリンケージの可能性は残ったが、撤退期限は落とされ、戦争遂行に関する大統領の権限には、ほとんど制限がかけられなかった(Murray, Shailagh, "Democrats Relent On Pullout Timetable", Washington Post, May 23, 2007)。予算切れのタイミングが近づくなかで、拒否権を覆せない民主党にとっては、今回はこれが限界というのが指導部の判断だろう。ペロシ下院議長は、「自分も反対票を投じるかもしれない」と言っているようだが、民主党にとっては、分裂含みの厳しい投票になりそうだ。
もちろん、これで決着がついたわけではない。9月には次の山場がやってくる。票には現れなかったが、共和党の揺らぎも明らかになってきた。院内総務という要職にあるベイナー下院議員ですら、「9~10月になれば、議員は(増派が)上手く行っているかを、そして上手く行っていないのならば、プランBが何かを知りたがるだろう」と、on the recordで述べているほどだ(Barnes, Julian E., "Boehner says GOP will want results in Iraq", Los Angels Times, May 7, 2007)。
民主党指導部も、表向きは強気である。エマニュエル下院議員に言わせれば、今回の補正予算は、「大統領のイラク政策の終わりの始まり」だし(Hulse, Carl, "Democrats Pull Troop Deadline From Iraq Bill", New York Times, May 23, 2007)、ペロシ下院議長は、9月こそが「最後の審判」だという(Murray, ibid)。
もっとも、それは今のストーリー。議員達が表立って語らないのは、「9月以降」に何が起こるのか、もっと言えば、何がプランBなのか、という問い掛けへの答である。
9月の時点では、増派は上手く行っていないという評価になる可能性が高い。司令官の報告は、明白な回答を示さないとみられている。加えて、そもそも「何が成功か」という点がハッキリしていない。「測りをもたずに家を建てようとしてるようなもの(キングストン下院議員)」なのだ(Stolberg, Sheryl Gay, "See You in September, Whatever That Means
", New York Times, May 13, 2007)。一方で、犠牲者やテロ・暴動がゼロになるわけではなく、メディアは間違いなくそうした現実をとりあげる。そうなれば、印象論としては、「上手く行っている」とはなりにくい。
果たして、その先米国はどう動くのか。過熱したレトリックの後に、国民を納得させられるプランBはあるのだろうか。
「9月以降」の戦略を巡る動きは出始めている。現地の司令官は、兵力の維持を前提に、来年末までの目標を見込んだ、新しいプランを作成中だという(Tyson, Ann Scott, "New Strategy for War Stresses Iraqi Politics", Washington Post, May 23, 2007)。また、政権周辺からは、超党派の支持を得るために、米軍の役割をイラク兵の強化に限定し、部族対立の鎮圧からは手を引くという案が、観測気球として上げられているようだ(Ignatius, David, "After the Surge", Washington Post, May 22, 2007)。
はっきりしてきたのは、ワシントンと戦場の間の、タイム・テーブルの乖離である。世論との相乗効果が起これば、戦場の現実に対応した政策運営は、ますます難しくなる。ワシントンの住人は、秋までの時間を使って、ちょっとクール・ダウンした方が良いような気がする。
というわけで、このページも(投票結果の記録等は別にして)暫くはイラクから離れようと思う。今度こそ。
先ずは隗より始めよ、というほどのことでもないですが。
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