クライスラー買収:スノーのセカンド・チャンス?
今日はPCに向う余裕がなさそうなので、携帯から簡単に。
サーベラスのクライスラー買収が発表された。一時囁かれていたように中国に買われた訳ではないので、一義的には通商政策への波及はないだろう。むしろ政策的な観点で気になるのは、同社の退職者向けの医療保険・年金の積立不足(レガシー・コスト)の処理である。
理由は3点ある。
第一は、自動車業界の力関係に与える影響。クライスラーがレガシー・コストの軽減に成功した場合、GM・フォードも必死に続こうとするだろう。そうなれば、日本企業との力関係にも影響があるだろうか。
第二は労組の対応。レガシー・コストの処理には、労組の譲歩が必要である。前々からビッグ3の復活には必須といわれていたことではあるが、労使協約の改訂が近付くなかで、どのような解決策が見出だされるのだろうか。昨日の通商政策に関するブッシュ政権と議会民主党の合意に続き、労組にとっては厳しい局面である。
ちなみに、自動車労組(UAW)の指導部は、買収を支持する方針を明らかにしている。会社側からは、労組側に交渉の様子が逐一報告されていたようで、最終的な意見を聞かれずじまいだった通商合意とは大分様子は違う。
いうまでもないが、クライスラーでの合意は、GM・フォードにとってのモデルになる。一説によれば、グッドイヤー社のように、会社側の資金援助を条件に、労組がレガシー・コストを引き取る可能性も模索されているようだ。
第三は、医療保険制度改革への影響である。ビッグ3は、レガシー・コスト負担軽減の思惑から、制度改革を支持している。仮に自助努力だけでコストを軽減してしまった場合、ビッグ3の立場はどう変わるだろうか。または、クライスラー自体が、国家的な解決策を求めるのだろうか。はたまた、クライスラーの社員が厳しい仕打ちを受けることで、国としての改革機運が高まるという展開もあるだろうか。
改めて思い知らされたのは、市場は政策の不作為をいつまでも放置はしないという現実である。オバマが提案した、燃費向上努力と引き換えにした公的支援など、牧歌的にすら感じられてしまう。
同じようにレガシー・コストを抱えていた鉄鋼業界は、企業破綻による債務処理という経路を辿った。ビッグ3の場合も、労組の譲歩による解決という方向に向っているのかもしれない。
ところで、サーベラスの会長はスノー前財務長官である。長官自体には手をつけなかったレガシー・コストの問題に、民間に立場を変えて取組むというのも、何とも米国的だ。長官時代の評判は今一つだったスノーにとっては、大きなセカンド・チャンスといえそうだ。
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