2007/05/25

Price You Pay : ヒラリーと医療保険改革

24日にヒラリーが医療保険に関する演説を行なった。ヒラリーは、医療保険関係の提案を3回に分ける方針で、24日はその第一回。テーマは医療費の抑制策だった。この後、医療の質と無保険者問題に関する演説が続くという(Kornblut, Anne E., "Clinton Reenters the Health-Care Fray", Washington Post, May 25, 2007)。

面白いのは、演説の前日に、29日にオバマが医療に関する提案を発表するという報道があったことだ(Davis, Teddy, "Obama Ready to Get Specific on Health Care", ABC News, May 23, 2007)。どちらが仕掛けたのかは不明だが、互いを意識した神経戦を感じさせる。

そういえば、24日に上院で行われた補正予算に関する投票では、ヒラリーとオバマはいずれも反対票を投じているが、先に投票したのはオバマだったという。

いや、余談ですよ。イラクにはしばらく触れないお約束ですから。

もっとも、医療の問題については、ヒラリーに一日の長があるのは否めない。ヒラリーが医療に造詣が深いのはアメリカ人の常識。また、医療は複雑怪奇な問題であり、ヒラリーの政策オタク振りを見せつけるのには打って付けの舞台である。今回の演説にしても、ヒラリーは80以上の数字を引用し、プレス・リリースには70(!)もの脚注がついているというから恐れ入る(Meckler, Laura, "Clinton Health Care : By the Numbers", Wall Street Journal, May 24, 2007)。

というか、やりすぎ。

さらに、各候補が政策の違いを鮮明にしにくい可能性があることも見逃せない。医療は長年の課題であるだけに、様々な議論の蓄積がある。「医療費を減らし、無保険者を減らす」という目標が同じであれば、候補者の腕の見せ所は、主にメニューの組み合わせとディテールになる。これらは、なかなか有権者には伝えにくい部分である。そして、どれもが同じ提案に聞こえるのであれば、力量があると思われている候補が有利になるのではないだろうか。

今回のヒラリーの提案を見てみよう(Kornblut, ibid)。ヒラリーが提案したのは、以下の7つのステップ。これらによって、米国経済全体で年間1,200億ドルの医療費を削減できるという。

1.予防医療の強化
2.医療情報の電子化
3.生活習慣病対策の強化
4.既往症のある人への保険の提供
5.ベスト・プラクティスを探るための官民参加による取り組み
6.処方薬輸入の合法化
7.メディケアにおける薬価交渉の実現

いずれも、この問題を囓ったことのある人であれば、それほど意外感のある内容ではない。事実、既に改革案を明らかにしていたエドワーズ陣営は、「エドワーズは3ヶ月前に同じ提案をしている。ヒラリーの支援を歓迎したい」などと指摘している。

オバマはどうだろう。報道によれば、オバマの提案は、①無保険者を対象とした保険プールの新設、②予防医療の強化と情報化によるコスト削減、③高額医療向けの再保険の導入だという(Davis, ibid)。このうち、今回のヒラリーの提案にあたるのが②だが、その内容は極めて近そうだ。

それでも、これは「ヒラリーの提案」であって、エドワーズやオバマの専売特許にはなりにくい。むしろ、ヒラリー以外の候補は、「ヒラリーに近付けるのか」という視点から評価される傾向が強いだろう。

もっとも、ヒラリーにしてみれば、ファースト・レディ時代に、「自らが主導した改革の挫折」という多大な代償を払ったからこそ得られた、正当なアドバンテージ。ここで活かせなかったら…という思いはあるかもしれない。

なにごとにも代償は必要なのだ。

ところで、自分の自宅・職場のPCからは、ヒラリーのホームページのうち、プレス・リリースやスピーチの部分が全く見えない。これは自分だけなのだろうか?それとも、海外からはつなげないのだろうか?仕事上、非常に困ってしまう。2004年の選挙でブッシュ選対のHPに全くつなげず、えらく難儀したいやな記憶が蘇ってきているのだが...

解決方法をご存知の方は、ぜひ教えてください。

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