2007/05/08

for the record : 沈む船からは...

まずfull disclosure。普段このページは通勤時間を使って携帯に下原稿を打ち込み、それを元に帰宅後にお化粧を加えて更新しています。ところが、今日は携帯を忘れて出かけてしまったので、ゼロからの出発。と、いうわけで短めに備忘録を。

ブッシュ政権はレイム・ダック化したかしないか、なんていう問いもむなしい今日この頃だが、目に見える証として、既に政権から逃げ出す人が目立ち始めたようだ。APによれば、ここ6ヶ月の間に、大統領府・国防総省・国務省だけで、少なくとも20人の上級スタッフが辞めているというから、ちょっと驚きである("Early departures clip Bush security team", USA Today, May 7, 2007)。

大統領府からは4人が退出している。Deputy National Security AdvisorのJ.D. CrouchとMeghan O'Sullivan, Senior Director for RussiaのTom Graham、そして、北朝鮮問題で日本にもなじみの深い、Director for Asian AffairsのVictor Chaである。ロシアとの関係では、緊張の高まりも指摘され、まさにライス国務長官の訪露が近い時期。北朝鮮問題も大きな方向転換を行い、微妙なタイミングだ。

国防総省はまずラムズフェルドが辞めている。その補佐をしていたStephen Camboneも続き、assistant secretary for international security affairsのPeter Rodmanも辞めた。また、陸軍長官のFrancis Harveyは、ウォルター・リード陸軍病院の不手際の責任をとらされた。さらに、Senior policy cordinator for AsiaのRichard Lawlessも夏には離脱する見込みだという。

国務省もたいしたもの(?)である。国連大使のJohn Bolton、ambassador at large for human traffickingのJohn Miller、ライスのcounselorのPhilip Zelikow、assistant secretary for political and military affairsのJohn Hillen、counterterrorism cordinatorのHenry Crumpton、protocol chiefのDonald Ensenat、undersecretary for arms control and international securityのRobert Joseph、policy planning directorのStephen Krasner、undersecretary for economic, business and agricultural affairsのJosette Sheeran、assistant secretary for democracy, human rights and laborのBarry Lowenkron。

息切れがする。

ちなみに、APの記事に含まれた以外でも、財務省では、国際担当次官(Tim Adamsの後任)に指名されたJPMorgan ChaseのTimothy Ryanが、「個人的な理由(就任に必要な資産の処分を嫌ったという説)」で辞退してしまうという事件があったのも記憶に新しい。

政権末期になれば、人材が流出するのは普通の事態である。また、必ずしも政権に嫌気が差して辞めている人ばかりではなく、辞めさせられた人がいるのも事実だ。しかし、それにしても、1年半以上も任期を残しての「大量離脱」は普通とは言い難い。

政権にとって悩ましいのは、この時期から後任を探すのが容易ではないことだ。「乗りかかった船だから最後まで...」という力学は働くにしても、「沈むのが見えている船に今更乗り込むか?」といわれると、二の足を踏む人間は少なくないだろう。

マン・パワーが足りなくなれば、政治力や世論の支持をどうこういう余地もなく、政権は実質的に動かなくなる。ウッドワードの「ブッシュのホワイトハウス」を読んでもわかる通り、政府の運営は「適切な人材に適切に仕事を割り振る」ことにつきる。これだけ外交チームの人材が流出すると、「政権末期に外交でレガシーづくり」というわけにも行かない。

個人的には、職業柄として、米国の政治・政策が行き詰まるのはあまり楽しいことではない。とはいえ、「ブッシュ後」に備えて雌伏の時を過ごすのも悪くないだろう。

それより何より、米国の機能不全が1年超にわたって続きかねないこと自体に、何ともいえない落ち着かなさを感じてしまうのは自分だけだろうか。あいにく大統領に「権力の空白」が生じても、大統領選挙まではこれを埋める手だてはない。曲がりなりにも「大きな国」だ。あまりゆらゆらされると、周囲が目眩を起こしてしまいそうである。

...しかし、ここまで辞める人が多いと、残された人は寂しいだろうなあ...

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