2007/02/14

ロムニー、who?

2月13日、ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事が、2008年大統領選挙への出馬を表明した。といっても、正直言って「ロムニーって誰?」という人が多いのが現実だろう。無理もない。米国の世論調査でも、こんな結果だからだ(polling report.com)。

Time Poll conducted by Schulman, Ronca & Bucuvalas (SRBI) Public Affairs. Jan. 22-23, 2007. N=441 registered voters nationwide who are Republicans or lean Republican.

"Now I'm going to read a list of candidates who might be running for the Republican Party presidential nomination in 2008. If the Republican presidential primary or caucus in your state were being held today, listen carefully to the names and then tell me which candidate you would be most likely to vote for. . . ."
%
John McCain 30
Rudy Giuliani 26
Newt Gingrich 14
Mitt Romney 5

そう、ロムニーは共和党の候補者だ。そして、支持率は5%。でも、ロムニーはいわゆる「ビッグ3」の一角とみなされている。マッケイン、ジュリアーニに続く3番手というわけだ。ちなみに、民主党のビッグ3は、ヒラりー、オバマ、エドワーズである。

5%なのになぜ「ビッグ3」なのか。ジョージ・ウィルは、昨年来日したときに、ロムニーのことを「あきれるほどハンサム」と評していたが、まさかそれが理由ではないだろう。

いずれにしても、ロムニーは「玄人筋」の評価が高い。米議会専門誌のNational Journalは、有力議員などのいわゆる「ワシントン・インサイダー」を対象に、Insider Pollというミニ世論調査を行っている。昨年12月に発表された共和党のインサイダーを対象にした調査では、ロムニーを共和党で最強の候補者にあげた回答が25%もあった。マッケインの56%に次ぐ堂々の第二位だ。

また、LA Times紙によれば、共和党下院議員の中では、ロムニー支持を表明している議員のほうがマッケイン支持を表明している議員よりも多いという。あのハスタート前下院議長もロムニー支持だ。Politico.comによると、上院の方は、さすがにマッケインへの支持表明が6人でもっとも多いようだが、それでもロムニーは3人。そもそもマッケインは上院議員だから、同僚から支持が集まりやすいことを考えれば、たいしたものだ。

それはさておき、政策の視点で興味深いのは経済スタッフの豪華さだ。ロムニーのスタッフには、あのグレン・ハバードと、グレッグ・マンキューが加わっている。いずれもブッシュ政権で重要な役回りを果たした有力な学者だ。もっとも、マンキューは不幸だったが...

それが理由かどうかはわからないが、ブッシュ政権をBig Goverment Conservativeと批判してきた陣営には、ロムニーの政府観に疑念があるようだ。CATO研究所のブログは、Another Bush?というタイトルで、ロムニーの発言をひきながらこんな風に記している。

Paragraphs like this reveal a Bush-style policy mish-mash:

We strengthen the American people by giving them more freedom, by letting them keep more of what they earn, by making sure our schools are providing the skills our children will need for tomorrow, and by keeping America at the leading edge of innovation and technology.

Does Romney think that freedom is something that government gives us? Isn’t Romney hinting that he wants the government to spend even more on schools and technology schemes, while also claiming that people ought to keep more of their earnings?

CATOは、ロムニーの発言に、いわゆる「小さいが強い政府」の臭いをかぎとっている。ノーキスト流の単に政府を小さくするという発想~「小さくて弱い政府」~ではなく、国民に自由を与えるために政府が積極的に活動するという考え方である。これは、2000年の選挙当時にブッシュ大統領が盛んに言っていた発想で、後の「オーナーシップ社会」構想の源流にもなった。

ロムニーは州知事時代に州民皆保険制の実現に取り組んだ。「政府の力を上手く使う」という視点があるのだろうか。

そういえば、「強い政府」系の識者が2000年の選挙で最初に目をつけたのは、マッケイン上院議員だったはずだ。ちなみにマッケイン陣営には、前CBO局長のダクラス・ホルツィーキンがついている。現時点では、2008年もイラク一本槍の選挙になりそうな風向きだが、ベビー・ブーマーの高齢化やグローバリゼーションへのバックラッシュ等を考えると、経済政策面での「政府の役割」に関する論争もききたいところだ。

もっとも、「強い政府」論は外交に行くとネオコンになる。こんなところにもイラクの影が感じられるてしまうのが、何ともやるせないところではある。

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