ヒラリーvs.オバマ:それを日本では「漁夫の利」という
誰でも戦いには勝つために参戦する。しかし、必ずしも参加者の中に勝者がいるわけではない。2月21日に勃発したヒラリー・オバマ論争にも、そんな風情がある。
文字で書けば「子供の喧嘩」だ。元クリントン支持者のハリウッドの大物がオバマ陣営に寝返り、資金集めパーティーでクリントン批判を繰り広げた。ヒラリー陣営がオバマ陣営を、非難合戦すべきときではないと「非難」、もらったお金を返すべきだといったら、オバマ陣営がクリントンだってホワイトハウスに泊めてやってお金をもらっていたじゃないかとやり返し...
まあ、この辺りは報道に譲っておこう。たとえば、New York Times紙の記事(Healy, Patrick and Jim Rutenberg, "In Both Parties, 2008 Politeness Falls to Infighting", February 22, 2007)は、共和党の内輪もめ(マッケインとチェイニー)も取り上げていて便利だ。
もちろん、両者が厳しく応酬するのには理由がある。「叩かれたら叩き返す」というWar Room メンタリティーは、ケリーのSwift Boatingを経て、ますます強くなっている。とくに民主党側の候補者には、支持者が「ケリーの二の舞になるような候補者はごめんだ」という雰囲気を漂わせているだけに、素早く対応できる能力を示さなければならないという強迫観念があるのではないだろうか。
しかし、厳しく応酬したからといって、勝者になれるとは限らない。
今回の件については、オバマ陣営が勝者だ(ヒラリー陣営は不必要に「貪欲」なところを見せてしまった)という人もいれば、ヒラリー陣営の勝ちだ(「前向きな選挙に徹する」というオバマ陣営の「偽善」を暴いた)と評価する人もいる(Tapper, Jake, "Round 1 in Fight for White House: Clinton vs. Obama", ABC News, February 22, 2007)。
しかし、なるほどと思うのは、ABC NewsのGeorge Stephanopolousの見方だ。Stephanopolousは、2月22日のGood Morning Americaで、「今回はどちらも勝っていない。両陣営とも早く引きたがっている。むしろエドワーズのように外部にいた候補者は上手くやった」とした上で、こう続けた。「予備選挙がこれだけ早い段階からネガティブになると、有権者がすべての候補者に嫌気がさしてしまい、ゴアのような人が相当後になってから参戦する糸口が生まれる」。
要するに「漁夫の利」だ。
そういえば、2月22日のNew York Times紙にDavid Brooksが、「共和党の予備選挙に勝つための7つのルール」というテーマのコラムを書いている(Brooks, David, "So You Want to Run..." ,February 22, 2007)。その2番目のルールが、「3のルールを忘れるな」である。曰く、3人の有力な候補者がいると、だいたい2人がお互いで破滅的な争いを始め、3人目が勝者になる。間違っても、争いの当事者になることなかれ。
玄人筋が「3番手」に注目し続けているのには、ちゃんとした理由がある。
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