2007/02/19

イラク戦争:候補者のもう一つの悩み

08年の大統領選挙を目指す候補者にとって、イラク戦争への態度は死活的な重要性をもっている。しかし、上院から大統領を狙う候補者にとっては、もう一つの悩みがある。スケジュール調整だ。

2月17日、米上院はイラク増派に反対する法案(S.574)の採択に失敗した。採択に移るために必要な、審議打ち切りの動議(Cloture Vote)は、60票の賛成が必要。しかし、投票結果は賛成56対反対34。4票足りなかった。

法案の本質はともかく、注目されたのは投票が土曜日に行われたことだ。

Washington Post紙は、「なかなか投票を進めない上院議員に最終兵器が発動された」と書いている。いかにも大げさだと思うかもしれないが、何と土曜日の投票というのは、過去10年間で5回しかない珍事だという。全米各地から選出された議員たちにとって、週末は地元に戻る大切な時間。週末の審議はもってのほかなのだ。

米国の議会は往々にしてデッドラインが見えないと動き始めない。週末や休会入り前には、「投票を終えるまでは審議を続ける」といった方針がでてきがちだ。本当に土曜日までやってしまうのは珍しいわけだが、今回の場合は、意地でも投票に移ろうとするリード上院院内総務(民主党)の意地だったのだろうか。

あおりを受けたのは大統領を狙う上院議員たちだ。間の悪いことに、米国は19日の月曜日がPresident Dayの休日で、議会は今週1週間休会。候補者たちにとっては絶好の遊説期間であり、既に予定がびっしりだったのだ。

といっても、大事なイラク関連法案。各候補者はスケジュール調整に奔走した。Wasington Post紙などによれば、ヒラリーはニュー・ハンプシャーで午後に予定していた会合を午前にリスケジューリングし、直後にワシントンに飛行機で戻り、投票のあとにニュー・ハンプシャーに戻った。オバマは遊説先のサウス・カロライナから投票に戻り、バージニアでの予定をこなして、カリフォルニアへ飛んだという。

例外的に欠席したのは、共和党のマッケイン上院議員。同議員は予定通りアイオワでの遊説に臨んだ。「政治的な得点稼ぎのためだけの投票に過ぎない」「国民や兵士たちへの侮辱だ」等の発言は、彼らしいといえば彼らしい。

今回の選挙には、多くの上院議員が立候補している。議員としてのスケジュールと候補者としての遊説活動はしばしば齟齬を来たす。そんな中で、米国にはこんなサイトもあって、上院議員がどれだけ投票をサボっているかを監視している。

Politico.comによれば、このサイトを運営している団体は、議員の月給($13,767)を各月の総投票回数(1月は39回)で割り、投票の「単価(同$353)」を算出。これに欠席した投票数をかけて、その分の請求書を議員に送りつける予定だという。

議会では、大統領選挙でも重要な争点となるであろうイラク問題が、しばらくは最大の論点であり続ける。とくに春から夏にかけては、戦費もからんだ予算審議が勝負どころを迎える。The Hill紙によれば、審議スケジュールを決めるリード上院院内総務は、「大統領候補者といえども、スケジュールでは特別扱いしない」と明言している。候補者にとっては受難の季節だ。

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