2007/02/21

ブッシュ復活の日?

イラク戦争の泥沼化でブッシュはレイム・ダック化したというのが定説のようになっているが、意外に体制を立て直しつつあるという指摘がある。それもイラクを足がかりに。

Washington Post紙のDavid S. BroderはBush Regains Footing(February 16, 2007)と題する記事で、94年中間選挙での敗北後、クリントン大統領が、翌年冬の政府閉鎖をめぐる議会との対決で生気を取り戻したように、下院がイラク増派反対決議を可決したこのタイミングで、ブッシュ大統領も息を吹き返してきたと指摘する。

とくに同氏は、下院が反対決議を採択してしまった件で、ブッシュは政治的な巧みさを示したと主張する。

3つの視点がある。

すなわち、①上院がペトロース陸軍中将の駐イラク米軍司令官指名を反対なしで承認したこと(1月26日に81対0で承認)をとりあげ、「下院と上院ではスタンスが違う」ことを指摘した(実際にその後上院は反対決議の投票に失敗)、②決議を推進する議員についても、国を思ってこその行動であり、その動機は正しいと評価する一方で、だからこそ決議の結果は米軍の志気に悪影響を与えたりはしないと指摘。暗に決議の意義を低下させた、③真の問題は戦費を認めるかどうかであると指摘して、より民主党が反対しにくい問題に論点をずらした、という点だ。

そのほかにもBroder氏は、メディアとの会合を増やしたり、移民やエネルギー問題などで超党派で取り組む姿勢もみせている点も評価している。

たしかに、下院での増派反対決議が、ブッシュの立場をそれほど悪くした気配はない。Associated Press-Ipsos poll が2月12~15日に行った世論調査では、増派を支持するとの回答(支持35:反対63)が、1月8~10日の調査(26:70)よりも増えている。

しかし、いぜんとして反対が6割を超えているように、ブッシュが国民の支持を取り返したわけではない。

実際に、CQ WeeklyのCraig Crawfordは、同じ下院のイラク反対決議可決を題材にしながら、より皮肉交じりに論評している(Last of the True Believers, February 16, 2007)。

同氏も、どんなに苦境にあっても、ブッシュは自らが望む道を貫徹していると指摘する。そこまではBroder氏と遠くはない。

ただし、Crawford氏はその理由を彼の頑迷さに求める。

「ブッシュはどれだけ多くのアメリカ人の信用を失っても、自分のことを疑ったりしない。反対の見解を示すことの正当さを徹頭徹尾否定するブッシュの姿勢は、時にはすべての人を疲れ果てさせ、ブッシュは結果的にやりたいように振舞えるようになる。今回もそんな出来事のひとつのようだ」。

ちなみにCrawford氏は、こうしたブッシュの「特質」に、あやうい勝利を確かな信任といってのけた、2000年選挙の記憶をも重ね合わせている。

ところで、角度の違うストーリー立てでありながら、Broder・Crawfordの両氏は、ブッシュの同じ発言を最後に引用している。

「本当に重要なのは戦地で何が起こるかだ。自分は(持論の正しさについて)一日中でも話し続けられるが、本当に重要なのは米国民が進展を目にすることだ」

結局は戦地の現実が国民の判断を決める。この点はブッシュも認めているというわけだ。問題は、結果を出すまでに、どれだけの猶予期間が残されているかという点だろう。

0 件のコメント: