For the Record : Devils in NH
一夜明けて、昨日の結果についてはさまざまな分析がある。思い切りはずしてしまった評論家たち(人のことは言えないが...)のいい振りは楽しみではあったが、あまり読み込む余裕がなかった。勇んでいつもより早く家を出たら、通勤電車がブレーキ故障で立ち往生。乗り換えさせられた満員電車に閉じ込められてしまったのだ(思い切り焦げたにおいがしました)。
仕方がないので、とりあえずDavid Brooksのコラムを紹介しておく。共和党予備選での投票者が多かったことを指摘しているところなどは、さすがにそつがない(Brooks, David, “Surprise Parties”, New York Times, January 8, 2008)。
ここでは、例によって数字を整理しておきたい。
投票結果はここ。
①民主党
クリントン:39%
オバマ:36%
エドワーズ:17%
②共和党
マケイン:37%
ロムニー:32%
ハッカビー:11%
ジュリアーニ:9%
トンプソン:1%
入り口調査については、NYTだけでなく、CNNやMSNBCにも出ている。それぞれ結果を出してくれる設問が違うので面倒だが、まずは民主党について、ざっくりと見比べてみた。
気づいた点は二点ある。
第一に、ニューハンプシャーでヒラリーを支えた支持層として、女性・低学歴・暮らしの厳しい層という絵柄が浮かび上がってくる。アイオワでは女性はヒラリーよりオバマを支持したが、ニューハンプシャーではこれが逆転した。また、学歴が低くなるほど、そして、家族の経済状況に対する見方が厳しくなるほど、ヒラリー支持が高くなり、オバマ支持が低くなる。オバマとヒラリーの支持層を評して、「ワインとビール」という言い方がされたが、ニューハンプシャーではこうした傾向が鮮明に出た。経済問題を重視する層がヒラリーを選んだ割合も、アイオワの26%に対してニューハンプシャーは44%と極めて高くなっている。前述のコラムでDavid Brooksは、「労働階級の女性(ウェイトレス・ママ)はヒラリーを支持し続けた」と指摘している。暮らしに密着した問題意識が、ヒラリーの背後にはあるのかもしれない。
投票日の前日に「散文より詩」と書いていたE.J.ディオンヌは、しぶしぶ前言を撤回しながら、「暮らしに問題意識をもつ人たちは、具体的な提案を求めているのかもしれない」と指摘している(Dionne, Jr., E.J., ”Hillary's Winning Wonkery”, New Republic, January 09, 2008)。そこで引き合いに出されているのが、後期のクリントン大統領が一般教書演説で細かい提案を並べ立てたときのことである。こうした演説は評論家には不評だったが、世論調査では好評だった。ちなみに、当時「小さな提案戦略」の背後にいたのは、今回ヒラリーが負けていたら立場が危うかったといわれる、マーク・ペンである。
第二に、ニューハンプシャーで負けたのは、オバマではなくてエドワーズではないかということだ。アイオワと比較した場合、ヒラリー票が伸びている層には、エドワーズ票が減少している層との重なりが目立つ。
例えば女性票である。たしかにヒラリーの女性票は30%から46%へと増加しているが、オバマの女性票は35%から34%へと微減したに過ぎない。他方で、エドワーズの女性票は23%から15%へと大きく減っている。
また、前述の暮らしに密着した問題意識をもつ層は、エドワーズからヒラリーへと流れた雰囲気がある。例えば、経済を重視する層の場合、ヒラリー票が18ポイント増加している一方で、オバマ票は1ポイントの微減。エドワーズ票は9ポイント減少している。「自分のような人のことを考えてくれること」を重視する層でも、ヒラリー票が17ポイント増加したのに対し、オバマ票の減少は3ポイント、エドワーズ票は7ポイント減である。こうしたエドワーズ票の流れをみると、今後のヒラリーの経済政策の方向性には要注意かもしれない。
ちなみに、エドワーズの苦境はこれにとどまらない。変化を実現できることを重視する層では、ヒラリー票が9ポイント伸びているが、オバマ票も4ポイント伸びている。対するエドワーズは6ポイントの減少である。11月の本選挙での当選可能性を重視する層では、オバマが29ポイント増加させた一方で、エドワーズは15ポイント減少させた(ヒラリーは4ポイント減)。
いよいよマッチレースの様相を呈してきた民主党予備選。エドワーズとその支持者の行方は、大きなかく乱要因になりそうだ。
1 件のコメント:
予想が外れたのは、プアホワイト層が世論調査に協力してくれないからで、彼らは黒人候補のオバマに対して冷たい・・・・・・実も蓋もない説明ですが、これがいちばん説得力があるように感じました。
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