2008/01/29

For the Record SC : He is Still Standing

フロリダでジュリアーニが去るかどうかという瀬戸際なのに、昔を振り返るのも心苦しいが、サウスカロライナの結果をまとめておきたい。

結果はご存知のとおり、オバマの圧勝である。その後のケネディ家によるオバマ支持の発表もあり、風向きはまたオバマの方向に吹きつつあるようにも感じられる。

数字は次のとおりである。

オバマ:56%
ヒラリー:27%
エドワーズ:18%

出口調査についていえば、これも既に大きく報道されているように、黒人票が圧倒的にオバマに集まったことで選挙は決まった(オバマ78%、ヒラリー19%、エドワーズ2%)。背景には、①黒人層が、オバマのアイオワでの勝利によって「黒人初の大統領」の実現を信じられるようになってきた、②クリントン陣営(とくに前大統領)によるオバマ攻撃が逆効果になった、という二つの点が指摘されている。既に取り上げたように、ヒラリーはミシガンでも黒人票を30%しか取れていなかった。その流れは続いているようである。

隠れたストーリーは、白人票である。事前のストーリーでは、地元のエドワーズがヒラリーと白人票を分け合い、結果的にヒラリーはオバマに届かないという筋書きがいわれていた。結果的には、黒人票の差が大きすぎたので、そうしたストーリーは前面には出てこなかった。しかし実際に、白人票はエドワーズとヒラリーで割れた(エドワーズ:40%、ヒラリー:36%、オバマ:24%)。白人層からのエドワーズの得票は、それまでの3州(アイオワ、ニューハンプシャー、ネバダ)の平均(17%)から23ポイント上昇している。これに対して、ヒラリーは3ポイント、オバマは10ポイントの減少となった。

とくに注目されるのは、投票日が近くなってきてから、白人票がヒラリーからエドワーズに流れた可能性がある点だ。ジョージ・ウィルによれば、1週間以内に投票先を決めた白人層の半数がエドワーズに入れている。ウィルは、クリントン夫妻のネガティブな選挙運動への反感から、白人層がエドワーズに流れたと指摘している(Well, George F., “Staying the Coarse”, Washington Post, January 29, 2008)。

度重なる敗北にもかかわらず、エドワーズ陣営は予備選挙から撤退しない方針を明らかにしている。その背景として囁かれているのが、民主党のキングメーカーを狙った思惑である(Bolton, Alexander, “Edwards Eyes a Brokered Convention”, The Hill, January 29, 2008)。いずれの候補者も過半数の代議員を確保できなかった場合、決着は党大会に持ち込まれる。そこでエドワーズが獲得した代議員が勝負を決めるというわけである。勝者総取り形式の多い共和党と違い、民主党の予備選挙は比例配分の色合いが濃く、各小選挙区で30%以上の票を獲得した候補には同数の代議士が配分されるケースが多い。オバマとヒラリーが競っている状況では、最後まで代議士数に大きな差がつかない可能性があるからだ。それどころかエドワーズ陣営は、「最も当選可能性がある候補」という視点から、代議員が党大会の場でエドワーズを指名する可能性すらあると指摘する。

本当にエドワーズがキングメーカーになる局面があるかどうかは別にして、エドワーズの参戦継続は、スーパーチューズデーの結果にも微妙な影響を与える(Cillizza, Chris, "The Edwards Factor", Washington Post, January 29, 2008)。二つの視点が指摘されている。第一に、エドワーズ陣営が狙っている州(ジョージア、アラバマ、テネシー、ミズーリ、ミネソタ、ノースダコタなど)に、オバマとの重なりがみられる点である。これらの州は共和党が比較的強い州であり、中道寄りにアピールできるオバマ陣営が重点とする州である。同時に、南部・農村地域はエドワーズが頼みにする地域だというわけだ。

もっとも、ワシントンポストのクリス・シリザは、ジョージアやアラバマといった南部の州では黒人票がオバマに集まるため、エドワーズの参戦継続によってもオバマの優位は変わらないと指摘する。むしろ第二の視点として見逃せないのは、ヒラリーとオバマがいずれも重視しているテネシーやミズーリでの、白人票の動きである。サウスカロライナと同様に、白人票がヒラリーとエドワーズに割れた場合、オバマが漁夫の利を得る可能性が指摘できる。

それにしても民主党の予備選挙は、トップランナーの争いが過熱する中で、党内の様々な緊張関係が焙り出される展開になっている。人種の問題、クリントンに対する複雑な感情、中道路線の是非、そして世代交代論。複雑化する各候補の選挙戦略は、少しのひずみも見逃さずに、そこを利用しようとする。多用な支持者を統合しているのが民主党の特質だといえばそれまでだが、このままでは本選挙への後遺症を心配しなければならなくなるかもしれない。

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