For the Record FL: How McCain could Win
フロリダの予備選挙は、共和党のフィールドを一気に狭めた。トップランナーといわれたジュリアーニは、結局のところ一度も浮上する機会がないままに、戦線から離脱していった。スーパーチューズデーは、事実上マケインとロムニーの一騎打ちの様相を呈してきたが、実際にはマケインがここで勝負を決める可能性が高いという見方も可能である。この点については、後ほど詳しく紹介する。
民主党については、フロリダの結果もさることながら、アップした数時間後にエドワーズが戦線から離脱してしまった。側近ですら驚いたというのだから仕方がないが(Chozick, Amy, Christopher Cooper and Nathan Koppel, “Edwards’s Exit Weighs on Outcome”, Wall Street Journal, January 31, 2008)、エドワーズの票と資金の行方が注目されるという事実に違いは無い。資金については、エドワーズの集金力はヒラリーやオバマには劣る。それでも07年第3四半期の献金額は3000万ドル。同時期に共和党のトップランナーであるマケインが集めた金額とほぼ同レベルである。票という観点では、全国レベルでみればほぼイーブンではないかと思われる。ただし、予備選挙は地域ごとなので影響も微妙になる。民主党の30%ルールを考えると、ヒラリーに白人票が流れる分、南部の代議員数で差がつきにくくなったかもしれない。
ニューヨークタイムスのロン・クラインは、ポイントになるのは、エドワーズ支持者は「変化」を求めるのになぜオバマに投票しなかったのか。そして、黒人に抵抗感があるのになぜヒラリーに投票しなかったのかという問いかけだと指摘する(Klain, Ron, “Plotting the Post-Edwards Strategy”, New York Times, January 30, 2008)。オバマはエドワーズ支持層が求める「戦う姿勢」を見せる必要がある。ヒラリーはエドワーズが「自分のことを気にかけている候補者」としてエドワーズに集まった票を、政策ではなく感情に訴えかけることで引き寄せる必要があるというわけだ。
まずは結果。
①共和党
マケイン:36%
ロムニー:31%
ジュリアーニ:15%
ハッカビー:13%
②民主党
ヒラリー:50%
オバマ:38%
エドワーズ:14%
民主党は民主党本部がフロリダにペナルティーを課したこともあり、選挙活動が行われないというイレギュラーな予備選挙になった。ヒラリーの勝利がスーパーチューズデーに向けたモメンタムになったかどうかは議論がわかれる。
共和党については、なんといってもマケインの勝利が大きい。これまでの予備選挙では、マケインは無党派層に支えられた部分が少なくなかったが、フロリダは共和党支持者として登録しなければ投票できない。マケインは、「共和党でも勝てる」ことを示した格好だ。
もっとも、内情はそれほど簡単ではない。出口調査に明らかなように、マケインの支持層はやはり中道よりである。
まず支持政党でみると、共和党支持者(投票者の80%)ではマケインとロムニーは33%で並んでいる。17%を占めた「無党派など」で、マケイン(44%)はロムニー(23%)を大きく引き離している。主義の観点では、保守(61%)ではロムニー(37%)がマケイン(29%)を上回っているが、穏健(28%)・リベラル(11%)ではマケインがそれぞれ43-21、49-24でロムニーを上回った。さらに特筆されるのは、反ブッシュ票がマケインに流れている点である。ブッシュ政権にネガティブな感情を持つ層(32%)ではマケイン(45%)がロムニー(23%)を大きく上回る一方、ポジティブな感情を持つ投票者(68%)はマケイン(33%)よりもロムニー(35%)に流れた。いずれのケースでも、投票者の多数を占める層ではロムニーがリードしたものの、少数層でマケインに引き離された故の敗北となっている。2000年のフロリダでは、マケインは「非常に保守」といわれる層でブッシュに7対1の差をつけられた。今回の差は2対1なので、主流派への歩みよりはある程度進んでいる。それでもマケインの「反主流派」振りが消えたわけではない。
もっとも、こうした留保点は残しつつも、マケインにはスーパーチューズデーで共和党候補の指名獲得を手中にする可能性がある(Martin, Jonathan and David Paul Kuhn, “McCain Takes Charge with Florida Win”, Politico, January 30, 2008)。大きな理由は、マケイン・ロムニー以外の候補にある。第一はジュリアーニである。ジュリアーニの撤退は、中道層の多い北東部でマケインに有利に働く。ニューヨーク、ニュージャージー、コネチカット、デラウェアに加え、地元であるアリゾナで勝てば、カリフォルニアを別にすれば、マケインは獲得代議員数でロムニーに大差をつけられる。他方、カリフォルニアは下院選挙区ごとに代議員が割り当てられているので、勝者総取りの場合のような大差はつきにくい。第二はハッカビーである。ハッカビーの継続参戦は、ロムニーとの間での保守票の分裂要因になる。とくに南部のアラバマ、ジョージア、オクラホマ、テネシー、アーカンソーといった州では、宗教保守派の票がハッカビーに流れかねない。計算上は、スーパーチューズデー後にもロムニーに逆転の道筋は残るかもしれないが、ロムニーは自らの資産を選挙戦につぎこんでいる現状だ。対照的にマケインは、資金不足といってもメディアの好意的な扱いに助けられている。
ところで、マケインの反主流的なアピールは、本選挙ではプラスに働くと考える向きが多い(Balz, Dan, “For McCain, Momentum That May Be Hard to Stop”, Washington Post, January 30, 2008)。共和党が大統領選挙に勝つためには、無党派層をいかに取り込むかが重要な課題になる。2006年の議会選挙での敗北が、無党派層の取りこぼしが最大の要因だった。加えて、他の有力候補と異なり、移民の受け入れに寛容な姿勢を示していたことから、ヒスパニック層への食い込みも期待できる。実際にフロリダでは、ヒスパニック(12%)の54%がマケインに投票している。民主党では党派を超えた支持を集めるオバマが健闘している。共和党で対抗できるのはマケインだというわけである。このため、政策の面では異論のある保守層も、大統領選挙での勝利という大目標の下に、マケイン支持で固まっていく可能性がある。
フロリダは、共和党の置かれた厳しい状況がよく反映された州である(Dade, Corey, “Are Republicans Losing Panhandle Grip?”, Wall Street Journal, January 31, 2008)。有権者登録数をみると、2006年秋から昨年末までに、民主党は有権者を1万7千人増やしており、共和党はほぼ同じ程度の有権者を失っている。また、ヒスパニック層の民主党シフトも進んでいるといわれる。住宅バブル崩壊の影響も厳しく、中間層の現政権に対する不満は高まっている。2000年の大統領選挙を決したフロリダを落とせば、共和党のホワイトハウス維持は難しくなる。こうした中で、共和党の地盤維持を指揮するクリスト州知事は、予備選挙直前にマケイン支持を表明した。
予備選挙の初期段階(といってもつい最近のことだが)では、「民主党はまとまっており有力候補も絞られている、共和党は分裂しており混戦」といわれていた。しかしスーパーチューズデーが終わってみると、「民主党は分裂、共和党は団結」という構図が生まれるかもしれない。
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