続く政策提案:オバマの税制改革案
今週は大型の政策提案が集中している。ヒラリーの医療保険改革案に続いて、18日にオバマが税制改革案を発表した(Zeleny, Jeff, "Obama Proposes Tax Cuts for Middle Class and Elderly", New York Times, September 19, 2007)。中間層以下を主眼とした、年間800~850億ドル規模の減税という触れ込みだから、それなりの大きさである。
詳細はココをご覧頂くとして、主要な減税項目は3つである。第一は勤労家族を対象とした還付可能な税額控除の新設。家族当たり1000ドルまでの控除によって、8100ドルまでの所得に対する所得税が相殺されるという。第二は、モーゲージを対象にした税額控除の拡充。アイテマイズしなくても(簡易申告でも)、利子に対する10%の還付可能な控除を受けられるようにする。第三は、年収5万ドル未満の高齢者に対する所得税(公的年金の課税分を含む)を廃止する。この他にも、納税手続きの簡素化といった提案も盛り込まれた。
もっとも、厳密にいえばオバマの税制改革案は「減税」ではない。他の税目による財源確保が見込まれているからだ。赤字減税を排除したことで、リベラル派の積極財政とは一線を画した格好である。むしろ、税負担の変更というのが正しい形容だろう。
具体的な増税策としては、まず法人税の抜け穴塞ぎと、タックス・ヘブン対策という、いわばお決まりの提案がある。また、ファンド課税の強化策として議論されている、キャリード・インタレスト課税も盛り込まれた。当初はオバマは後ろ向きだった提案である。さらに、ブッシュ減税の関連では、配当課税とキャピタル・ゲイン税の最高税率引き上げ(20~28%)が謳われている。取り敢えず、税制としての評価は保留するとして、政治的には、企業・金持ちの負担で一般国民の税負担を軽減する(しかも住宅や高齢者にも配慮して)という、メッセージとしては分かりやすい提案である。これが民主党の雰囲気だというのも納得的だろう。
おやっと思ったのは、高齢者減税のくだりで、「93年の税制改革が高齢者の年金収入に対する税負担を増した」という批判が出て来ることだ。この改革は、クリントン大統領が財政再建への足掛かりを作ったOBRA93の一部である。民主党系の識者では、OBRA93は勇気ある財政再建策として評価されやすい。敢えてその一部を批判するオバマの真意はどこにあるのだろうか。変なライバル意識だとしたら幻滅ではあるが、興味深いところである。
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