上院議員選挙に吹く民主党への追い風
2008年といえば、専ら大統領選挙に焦点が当たりがちだが、忘れてはならないのが同日に行われる議会選挙の行方である。このうち上院では、民主党に有利な状況が出来上がりつつあるようである。
ポイントは改選議席数と引退議員の数にある。任期6年・議席総数100人の上院は、2年毎の選挙で3分の1ずつが改選になる。現在の議席数は民主党51・共和党49と拮抗しているが、個別の選挙における改選議席数には偏りが生じる。そして2008年は、共和党の方が圧倒的に改選議席が多い選挙なのである。具体的には、民主党の改選議席が12であるのに対して、共和党は22議席が改選対象。22議席のうち17議席は2004年にブッシュが勝った州だが、昨今の共和党の不調の前では、こうしたアドバンテージも影が薄い。
さらに共和党にとって頭が痛いのは、現職議員の引退である。米国の選挙は圧倒的に現職が有利であり、現職が自ら議席を守ろうとするのと、新人に議席を引き継がせようとするのでは、議席維持の難易度に雲泥の差がある。しかし、共和党への向かい風を嫌気してか、今回のサイクルでは、再選見送りを決める共和党議員が目立つ。最近では、9月8日に共和党のヘーゲル上院議員(ネブラスカ)のスタッフが、同議員が2008年の選挙で再選を目指さない意向を明らかにした(Herszenorn, David M., and Jeff Zeleny, "Hagel Will Retire From the Senate in 2009", New York Times, September 9, 2007)。この他にも共和党の現職上院議員では、バージニアのワーナー議員と、コロラドのアラード議員が既に引退の意向を明らかにしている。スキャンダルで辞職しそうなアイダホのクレイグ議員の議席はともかく、バージニアとコロラドは現職引退で民主党のチャンスが広がった。
民主党サイドの自信を示すように、リベラル系のニュー・リパブリック誌は、上院の見通しを次のように分析している(Judis, John B., "Red Dawn", New Republic, August 31, 2007)。まず民主党が議席を奪いそうなのが、コロラドとニューハンプシャー。コロラドは名門のウダル下院議員が出馬するし、ニューハンプシャーでは知名度の高いシャヒーン前州知事の動向が注目されている。ミネソタ、メイン、オレゴンにも可能性がある。前述のように、バージニアとネブラスカにも現職引退で芽が出てきた。バージニアでは大統領選挙への出馬を一時模索したマーク・ワーナー前知事(Craig, Tim, "Mark Warner Weighs His Options", Washington Post, September 9, 2007)、ネブラスカではボブ・ケリー元上院議員が出馬すれば、民主党にとって強力な候補者になる。サウスカロライナ、テキサス、アラスカは共和党の現職が問題含みなので、良い候補者が揃えられれば民主党にも望みがある。これに対して民主党の現有議席で真剣に危ないのはルイジアナだけで、これにサウスダコタ、ニュージャージーが続く程度。民主党の現有議席維持はほぼ確実で、59議席までの上積みもあるという。
贔屓目に過ぎるかもしれないが、議会選挙の重要性が見逃せないのは事実である。特に国内政策においては、米国の議会は非常に強い権限がある。議会多数党の行方は、新政権の政策運営にも大きな影響を与える。2008年に改選となる上院議員は、2002年に選ばれた議員達である。民主党が上院の多数党を失い、共和党による大統領・議会の完全制覇を許した選挙である。代わって2008年の選挙で完全制覇を狙うのは、民主党ということになるのだろうか。
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