The Show Must Go On:夏の日の選挙戦の無常
夏の停滞感も何のその。それでも選挙は続いていく。それが一体何につながるのか。時には物哀しさすら感じさせながら。
8月11日にアイオワ州で、共和党の模擬投票が実施された(Balz, Dan and Michael D. Shear, "Romney Wins Iowa's GOP Poll", Washington Post, August 12, 2007)。結果は32%の得票を集めたロムニーの圧勝。序盤州での戦いを重視する戦略が、先ずは実を結んだ格好である。しかし、幾つかの注意点はある。まず、模擬投票での勝利は、予備選勝利に必ずつながるわけではない。1987年のロバートソンのように、模擬投票では34%の得票を得ながら、アイオワの党員集会すら勝ち抜けなかった例もある。まして今回の模擬投票には、ジュリアーニ、トンプソン、マケインといった大所が参加していない。さらには投票総数も、1999年にブッシュが勝った時(2万3千)の6割程度(1万4千)に過ぎなかった。
一方の民主党は、利益団体のご機嫌をとるために、頻繁に行われる討論会に忙しい(Nagourney, Adam, "Appearing Now on a TV Near You? Surely a Presidential Debate", New York Times, August 11, 2007)。8月だけでも、4日がネットルーツを対象にしたYearlyKosの大会、7日がAFL-CIO、9日が同性愛者支援団体の討論会だった。この後も、各地で労組を対象にしたワークショップが開催される予定である。民主党がここまで忙しいのは、多様な利益団体に支えられているからこそ。それだけに、特定の団体におもねった発言は、本選挙で共和党の候補者に攻撃される材料になりかねない。
もちろん候補者もその辺りは心得ている。どこまで致命的なコミットメントをせずに済ませられるかが、腕の見せ所である。その典型が、最近のネットルーツとの距離感だろう(Smith, Ben, "Candidates court bloggers, avoid commitment", Politico, August 4, 2007)。各候補者は、ネットルーツの重要性を強調し、彼ら個別のアジェンダには賛同の意を示す。しかし、2004年のディーンや06年のリーバーマン予備選に見られたように、「反戦」といった大きな方向性で、民主党がネットルーツに引きずられているわけではない。いわば各候補者は、ネットルーツを「数ある利益団体の一つ」として扱い始めているという指摘もある。結局のところ、ネットルーツといっても、まだまだ中年の白人男性に偏った集団なのである(Vargas, Jose Antonio, "A Diversity of Opinion, if Not Opinionators", Washington Post, August 6, 2007)。
そんな無常感を感じていたら、驚きのニュースが飛び込んで来た。8月末をもって、カール・ローブが辞職するというのである(Gigot, Paul A., "The Mark of Karl Rove", Wall Street Journal, August 13, 2007)。大物の離脱が続いたブッシュ政権だが、遂に来るべき時が来たということだろうか。
ローブはブッシュ政権や共和党の先行きには楽観的である。イラク状勢は増派のおかげで改善に向い、盗聴認可や財政問題では民主党がつまづく。大統領の支持率はいずれ回復するし、何かと批判の多い外交政策でも、テロリストを匿う国はテロ国家と見做されることや先制攻撃の容認は、今後の政権にも引き継がれる。08年の大統領選挙にしても、こらえて大きな論点を主張し続ければ、共和党は勝てる筈だ。
こうしてまた、暑い夏の一日が過ぎて行く。投票日は依然として遥か蜃気楼の彼方である。
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