共和党の経済政策:Attack of the Second Tire
共和党有力候補の経済政策に「アナクロニズム」が指摘される中で、やや違った趣向の攻め方をしているのが、二番低下の候補者達である。実際に、ニューヨーク・タイムスのデビッド・レオンハートなどは、10月9日の経済問題をテーマにした討論会を題材に、米国民の経済的な不安感に触れるか否かが、有力候補とそれ以外の候補者を分ける明確なラインになっていると指摘する(Leonhards, David, "Atop G.O.P., It’s Always Sunny", New York Times, October 10, 2007)。
レオンハートは、ロン・ポールの「多くの米国民はリセッションの只中にいる」との発言や、ハッカビーが次世代の暮らし向きに不安を持つ米国民が多いと指摘した点をとりあげる。これに対して有力候補者は総じて「ばら色」の経済認識を披瀝した。トンプソンが「リセッションに向かっているとする理由は見当たらない」と述べたかと思えば、ロムニーは討論会が行われたミシガンの窮状を「一つの州だけのリセッション」と呼び、ジュリアーニはファンドの隆盛について「市場というのはすばらしい」と分析して見せた。ヒラリーのバス・ツアーに象徴されるように、民主党が国民の経済的不安感に焦点を当てているのとは対照的である。
こうした中で、経済政策の中身という点で識者の評価を集めているのが、ハッカビーである。民主党系のメディアであるDemocratic Strategistのエド・キルゴアは、討論会を違った方向性に導く可能性があったのは、格差についても語ろうとしたハッカビーだったと指摘する(Kilgore, Ed, "Anachronisms", The Democratis Strategist, October 9, 2007)。実際にハッカビーは、現在米議会をにぎわせているSCHIPについても、ブッシュ大統領による拒否権発動を明確に支持しなかった唯一の候補だった(Marcus, Ruth, “Between a Veto and the Base”, Washington Post, October 10, 2007)。ワシントン・ポストのスティーブン・パールスタインは、ハッカビーを確かな保守の信念に支えられながら、知性と正直さ、論点に関する知識と現実的な対応策を兼ね備えていると評する(Pearlstein, Steven, "Two Hours, Nine Candidates, and Almost Nothing New", Washington Post, October 10, 2007)。知名度よりも政策が重要なのであれば、共和党の予備選挙を盛り上げるのはトンプソンではなくハッカビーだというのが彼の見立てである。
レオンハートが注目するのは、かつては有力候補だったマケインである。マケインは討論会に先立つ講演会で、「中間層の不安」に対する共和党からの対応策を提示したという。そこでマケインは、「グローバリゼーションはチャンスだが、自動的に全ての米国民の利益になるわけではない」との認識を示し、失業保険の改革などを通じた長期失業者対策の必要性を指摘した。また、公教育への競争原理の導入や医療保険制度改革案の提示も約束した。こうしたマケインの方向性についてレオンハートは、減税一辺倒の従来の共和党の政策と、「大きな政府」に傾斜する民主党の政策の中間点を探していると指摘する。
印象的なのは、マケインのアドバイザーであるホルツィーキン前CBO局長のコメントである。ホルツィーキンは、「われわれはもはや政府を消滅させようとする政党として戦っているわけではない。ただ、政府をどのように使うかという点で一致していないだけだ」と指摘する。レオンハートは、こうしたマケイン陣営の議論が注目を浴びるようになれば、例えばロムニーなども持論の貯蓄優遇策などをもっと前面に押し出すようになるのではないかと指摘する。
現時点では、こうした提案を行っている候補者は、必ずしも有力候補とは言いがたい。もちろん、保守層にアピールしなければならない予備選挙が終われば、共和党の有力候補者もトーンを修正してくる可能性はある。そうでなければ、本選挙での経済政策を巡る両党の議論は、なかなかかみ合いそうにない。
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