2007/08/23

How Many Ways to Leave the Congress ?:規制行政に活路を見出すブッシュ政権

レイム・ダック化が進むブッシュ政権にとって、民主党が多数を占める議会を相手に新たな政策を実現するのは至難の業である。しかしあくまでも妥協を嫌うブッシュ政権は、ある逃げ道を頻繁に使うようになってきた。規制などの行政府の権限で実施できる政策変更である(Riechmann, Deb, "Bush Pushes Agenda _ Without Congress", Wasington Post, August 16, 2007)。実際にブッシュ政権は、8月10日を皮切りにして、行政権限による政策変更を金曜日毎に発表している。

口火を切ったのは、移民政策に関する10日の新政策である(Allen, Mike, "Bush orders new crackdown on U.S. border", Politico, August 9, 2007)。ブッシュ政権は移民法改革の立法化に失敗したが、今回の新政策はそのなかでも行政府の権限だけで実施できる部分を取り出して進めていくのが狙いである。具体的には、国境警備の強化や不法移民を雇用した企業への罰則強化など、総じて不法移民に厳しい内容になっている。

翌週の17日には、医療保険に関する通達が発表された(Pear, Robert, "Rules May Limit Health Program Aiding Children", New York Times, August 21, 2007)。これは、貧しい家庭の子どもを対象とした公的な医療保険であるSCHIPについて、その対象者の拡大を難しくする内容である。SCHIPは無保険者対策の切り札として議会民主党がその拡充を目指している施策である。しかしブッシュ政権は、SCHIPが民間の医療保険を代替してしまうのは制度の趣旨に反するとして、議会と対立してきた。今回の通達は、実質的に貧困ラインの250%を加入資格の上限に定めたものだと見られている。例えば新しい通達では、州政府が貧困ラインの250%を超える子どもに対象を広げるためには、まず貧困ライン200%以下の子どもの90%をSCHIPに加入させる必要があるとされている。しかし、現時点でこうした基準を満たしている州はないし、そもそもSCHIPにはそれだけの予算が配分されていない。この他にも州政府には、民間医療保険からSCHIPに加入者が直接移動しないように、1年間の無保険期間をSCHIPの受給資格に加えたり、民間保険に準ずる自己負担を課すことが求められている。

続く24日に発表される見込みになっているのが、かねてからブッシュ政権と議会民主党の争いの種になってきた、環境・エネルギーに関する新しい規則である(Broder, John M., "Rule to Expand Mountaintop Coal Mining", New York Times, August 23, 2007)。石炭採掘企業に、マウンテン・トップ・マイニングと呼ばれる採掘手法を利用しやすくするのが狙いである。この手法は、石炭が埋蔵されている山の上部を爆薬などで吹き飛ばし、その残骸で近隣の河川や渓谷を埋め立てるという、いささか乱暴なやり方である。このため、かねてから環境保護団体などから問題視されており、訴訟の対象にもなってきた。新しい規制は、残骸の廃棄に関する基準を緩和して、こうした訴訟の可能性を排除しようとしているという。

政権末期の大統領が通達行政に頼るのは珍しいことではない。カーター、ブッシュ父、クリントンは最後の2年間にかけて新規規制の数を増やしている。またブッシュ政権の場合は、既に昨年の10月の段階で、閣僚に対して議会を経由しない政策遂行の方法を検討するよう指示を出していたという経緯もある(Adams, Rebecca, "Lame Duck or Leapfrog", CQ Weekly, February 12, 2007)。中間選挙での敗北を懸念した側面はあるが、仮に共和党が多数党を維持したとしても、自らの求心力低下は避けられないと感じていた節もある。実際に、最近の新規制のなかでも移民に関する部分は、民主党というよりは共和党の反対で立法化できなかったものである。

今後もブッシュ政権は、エネルギーや環境、さらには教育問題などで、規制を使った政策運営を展開する可能性を示唆している。しかし、8月といえば議会は休会中。さらに週末に入る直前の金曜日ごとに新しい規制を発表するとは、それだけで怪しさの漂う行動である。9月になれば、一連の規制行政を民主党が厳しく批判するのは必至の情勢であり、大統領と議会民主党の対立の構図は、政権の最後まで続いてきそうな気配である。

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