2008/08/28

Separate Lives :所得、貧困、医療保険

何でこの日にこのネタを?というところかもしれない。しかし、だからこそのこのページである。

8月26日に商務省センサス局が、2007年の所得・医療保険に関するデータを発表した。ブッシュ政権下の景気拡大の特徴が読み取れる興味深い数字である。

06年対比の数字では、貧困率はほぼ前年並み(12.3%→12.5%)、実質中位所得はやや上昇(49,568ドル→50,233ドル)、所得格差はわずかに縮小(ジニ係数で0.470→0.463)、無保険者(比率では15.8%→15.3%、人数では470万人→457万人)も減少した。これだけ見れば、悪くない数字である。

しかし、一歩引いて長めの視点でみると、様相が変わってくる。CBPPが指摘するように、所得や医療保険に関する数字は、前回の景気拡大時のピークにまで戻っていないのだ。07年以降の景気の弱さを考えると、今回の景気拡大は、前回の景気後退の落ち込みを取り戻すに至らないままに、終焉を迎えた可能性が高い。

縮小しているといわれる所得格差についても、センサス局の数字には注意が必要だ。CBPPのレポートの脚注にあるように、センサス局の数字には、①キャピタルゲインが含まれていない、②999,999ドル以上の所得を勘定しない、という特性があるからだ。このため、超高所得者の数字はこの統計には十分に反映されていない可能性がある。

この他にも、今回のデータの細部には、面白い特徴がある。まず、実質中位所得における世代格差である。2007年の実質中位所得は、前回の景気の谷だった2001年対比では1.5%上昇している(前回ピークの1999年対比では-0.8%)。これを世代別に分解すると、現役世代では減り具合が多きい一方で、退職年齢にさしかかってくる世代では、むしろ実質中位所得は上昇している。具体的には、15〜24歳:-3.7%、25〜34歳:-3.4%、35〜44歳:-0.5%、45〜54歳:-3.7%。ここまでは減少である。ところが、55〜64歳:6.8%、65〜74歳:9.2%の増加を記録している。所得の内訳はこの統計からはわからないが、直感的には勤労所得は伸びず、年金等がある年齢層は堅調、と読めなくもない。CBPPのレポートでは、公的年金の支給額が現役時代の賃金上昇率にリンクしている点を取り上げ、90年代の好景気を経験した世代の年金支給額が上昇しているとみている。ちなみに、前回の景気拡大はこうではなかった。景気の谷(1991年)と山(2000年)で比較すると、実質中位所得は10.6%増。15〜24歳:21.5%、25〜34歳:15.3%、35〜44歳:6.9%、45〜54歳:4.7%、55〜64歳:8.6%、65〜74歳:10.8%といった具合で、確かに高年齢層の伸びは大きいが、若年層でもかなり伸びている。

無保険者の数字も細部をみておきたい。無保険者が減ったといっても、民間保険については加入者数はほぼ同じ(2.02億人)、比率は低下(67.9%→67.5%)している。無保険者の減少に貢献しているのは、公的保険(加入者数は8030万人→8300万人、比率では27%→27.8%)だ。その内訳では、高齢者向けのメディケア(13.6→13.8%)、低所得層向けのメディケイド(12.9→13.2%)のいずれもが、存在感を増している。

ここから政治的な示唆を引き出したくなるのはやまやまだが、ある程度は自明だろう。政治的にはビッグイベントに食傷気味の今日この頃。とりあえずは数字の紹介に止めておきたい。

さて、そろそろ演説の時間になりそうだ。それにしても、40分は長いだろ。拍手も入れたら1時間近くになりそうだ。さてさて。

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