2007/09/07

Bobos in the Buy American Mood

バイ・アメリカン運動といえば、かつての日米摩擦を彷彿とさせる言葉だが、最近では随分とその性格が変わっているようである。

ニューヨークタイムスが伝えるところによると、かつては工場労働者や保守的な愛国者の専売特許だったバイ・アメリカン運動が、最近では比較的裕福な都市部のインテリ層(デビッド・ブルックスのいうところのbobos:bourgeois bohemians)の間で流行しているようだ(Williams, Alex, "Love It? Check the Label", New York Times, September 6, 2007)。背景にあるのは、「罪を感じないで豊かな暮らしを送りたい」という思いだという。大量のエネルギーを使う輸入品の輸送は、地球温暖化に拍車をかける。中国の玩具に代表される輸入品の安全性も気掛かり。労働・環境基準の低い海外の工場を支援するのも気が進まない。そんな発想が、割高なプレミアムを払っても、メイド・イン・アメリカを買おうというインテリ層の動きにつながっている。これに呼応したビジネス界にも、敢えて高級ブランドのラインだけを米国内に残す動きがあるという。

興味深いのは、主に民主党支持者である「新バイ・アメリカ運動」の担い手が、かつては自由貿易を支持していたという事実だ。換言すれば、こうした人達こそが、クリントン政権の中道路線を支えていたのである。サーブを乗り回し、クライスラーのディーラーがどこにあるかも分からない。泊まるホテルはフォーシーズンズで、モーテル6なんて見たこともない。そんな人達がバイ・アメリカンに走っている。他方で、ウォルマートを愛用する「旧バイ・アメリカン」の支持者には、メイド・イン・アメリカは高嶺の花になろうとしている。

中国からの玩具の安全性に関する問題は、米国の大手玩具業者が連邦政府に安全性検査の統一基準を求める事態に発展している(Lipton, Eric and Louise Story, "Toy Makers Seek Standards for U.S. Safety", New York Times, September 7, 2007)。消費者の信頼を取り戻すためとはいえ、業界自ら規制強化を求めるというのはよほどのことである。

グローバリゼーションを支える米国の力学は、微妙な変化を遂げつつあるのかもしれない。

0 件のコメント: