2008/08/27

Who's the Boss / 民主党大会3日目(プレビュー)

民主党大会も3日目。本日の主役、であるはずのバイデン候補にとっては、晴れがましい一方で、荷の重い一日だ。

バイデン候補の副大統領指名受諾演説は、文句無く今日の目玉となるはずの行事である。東部時間の10時30分に予定されている演説には、遊説から駆けつけたオバマ候補も立ち会う予定だ。しかし、バイデン候補の前には、「クリントン」の大きな影が差し掛かる。二日目から三日目にかけて、党大会の話題の中心は「クリントン」につきる。一日目のミシェル夫人の演説は上出来だったが、二日目が始まる頃には、メディアの関心はヒラリーの演説に完全に移動してしまった。そして、三日目にはクリントン大統領の演説もある。オバマ候補が不在であるという事情も手伝って、党大会はさながら「クリントン劇場」の様相を呈している。いかにして「クリントン劇場」から、「オバマ-バイデン」に焦点を切り返すのか。バイデン候補の役割は重い。

昨日のヒラリーの演説にもかかわらず、ヒラリー支持者には割り切れない思いが残っているといわれる(Saslow, Eli, "Many Clinton Supporters Say Speech Didn't Heal Divisions", Washington Post, August 27, 2008)。さらに今日はクリントン大統領の演説もある。大統領の演説は東部時間の午後9時から。主要メディアの放送が始まる午後10時よりも前のスロットで、時間も10分までに制限されているという。昨日のヒラリーと比べても、また、明日は野外スタジアムでゴア副大統領が喋ることを考え合わせても、存在感は削られている。それでも、メディアは「クリントン劇場」を盛り上げようとするだろう。討論会でみられたように、バイデン候補もしゃべりは悪くない。しかし、いかんせん有権者にはなじみが薄い。これまで毎日党大会に出席しつづけているのも、少しでもテレビに露出して、有権者に印象付けようという狙いのように思われる。

そもそも、バイデン候補の副大統領指名は、「玄人好み」の安全策だった。外交経験やブルーカラーの出自、カトリックである点や攻撃的な言動に長けている点など、バイデン候補はオバマ候補に欠けている点を上手く補う。地理的にも、オバマ候補が苦手とするペンシルバニア出身というプラスがある。さらには、重量級の副大統領候補をオバマ候補が選んだことで、テレビ討論会での「見栄え」などを考えなければならないマケイン陣営の副大統領選びも、一層難しくなっているという見方もある(Cummings, Jeanne, "Biden is Wrench in McCain's VP Choice", Politico, August 27, 2008 )。この辺は、オバマ陣営も計算ずくだろう。

その一方で、オバマ候補が「変化」という自らの強みをさらに光らせるような選択をしなかったのも事実である。むしろ、「変化」という切り口で言えば、ワシントンの超ベテランであるバイデン候補は、マケイン候補に近いとすらいえる。投票歴をみても、バイデン候補はリベラルな部類に入る。同じく投票歴がリベラルなオバマ候補と抱き合わせても、「新しい政治」につながる要素は見出せない。ギャロップ社の世論調査をみても、バイデン候補指名による支持率押し上げ効果は全くみられていない。

オバマ陣営は、「変化」の部分はオバマ自身の力で乗り切れる、という計算だろう。しかし、折角の晴れ舞台であるバイデン候補にしてみれば、一瞬にして注目が明日のオバマ演説に映ってしまうのも切ない話である。自分なら、クリントン大統領は最終日に持っていって、ゴア副大統領と一緒にオバマ候補の紹介役にすればいいのにと思ってしまう。まあ、そうすると、3日目自体が沈んでしまいかねないから、そこもオバマ陣営の計算には入っているのかもしれないが。

それはそうと、最終日のインベスコ・フィールドにはスティービー・ワンダーが登場するらしい。実は前評判では、ブルース・スプリングスティーンという噂も流れていた。大統領選挙が進むに連れ、良い意味で「人種」の問題もオープンに議論されてくるようになった気がする。ケリーはスプリングスティーン、オバマはスティービー・ワンダーというのも、一つのあり方なのだろう。それにしても、わざわざ噂を打ち消すプレス・リリースまで出ているとは...。

音楽の話で言えば、昨日ヒラリーが演説する前に流れた煽りビデオ(?)だが、なぜレニー・クラヴィッツのAre You Gonna Go My Wayが使われていたのだろう?ヒラリーは何をしゃべろうとしているのかと、一瞬ドキドキしてしまった。

...おっと、いけないいけない。今日はバイデン候補の日だった。まずはお手並み拝見だ。

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